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 当会議は2020年1月20日厚生労働大臣に対し、わずか13例の臨床データのみで承認された再生医療等製品「ステミラック注」の承認を取り消し、臨床試験に戻して有効性・安全性を確認するとともに、本品が適用された再生医療等製品の「条件及び期限付承認制度」について、その適用条件を具体的に限定し慎重な審査を行うなど、透明性の高い制度への見直しを求める要望書を提出しました。

 ステミラック注は、脊髄損傷の治療を目的とした製品で、患者自身から採取した骨髄液中の間葉系幹細胞を体外で培養・増殖させて製造し、静脈注射により使用します。脊髄損傷は、完全麻痺の一部を除けば、自然治癒及び標準治療(外科処置・リハビリテーション)によって徐々にではあっても改善する疾患です。2016年2月、本品は先駆け審査指定品目となり、先駆け総合評価相談、優先審査対象ともなりました。先駆け審査指定品目になると申請から承認までの期間が目標6か月に設定され、先駆け総合評価相談は本品の承認審査を担当する医薬品医療機器総合機構が開発の早い段階から企業と面談し早期製品化を支援します。本品は2018年12月条件及び期限付製造販売承認を取得しました。これは、効能効果・性能が「推定」される段階で販売を承認し、7年を超えない期限内にそれらを検証し本承認を得る仕組みです。

 ステミラック注は世界で初めて承認された脊髄損傷治療用再生医療等製品です。しかし承認の根拠となったのは、比較群のないわずか13例の患者での使用成績でした。これでは脊髄損傷の改善が本製品の治療効果によるものか、自然治癒やリハビリテーションによるものか判断ができません。本品の審査報告書も、本品以外の要因が結果に影響した可能性が否定できず、有効性を評価する上で少なくとも標準治療を実施した場合の比較可能なデータを取得しておくべきだったと指摘しています。脊髄損傷は国内に毎年約五千人の新規発生患者がおり、実際すでにランダム化比較試験 (目標症例88例)も実施中の疾患なのです。

 少数例での販売承認は、科学総合誌Nature、Scienceをはじめ国内外から強く批判されています。この背景には、再生医療等製品が経済優先の「アベノミクス」成長戦略の柱とされていることがあります。条件及び期限付承認制度の適用範囲などについても本来必要と思われる省令や行政通達が出されず、不明確なまま運用されており改善の必要があります。

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