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 ディオバン事件の高裁判決を紹介しましたが、当会議はこの事件について、2013年に刑事告発をしています。告発対象としたのは、検察が起訴した学術誌に掲載されたサブ解析論文ではなく、2011年から2012年にかけて『日経メディカル』に掲載された複数の広告でした。これらは、臨床研究に関与した医師の対談形式をとった、ノバルティスファーマ株式会社の提供であることが明記されたカラー刷りの広告で、これが薬事法の規制対象となることは、誰がみても明らかというものでした。

 これが起訴されていれば、有罪となっていたことは疑いの余地がありません。当会議の告発が不起訴となったのは、公訴時効まで時間的な余裕がなかったためであると思われますので、厚労省の検討会を見守っていて、刑事告発に踏み切るタイミングが遅れたことが悔やまれます。

 ところで、広告規制については、2018年9月、厚労省の「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」が通知され、2019年4月から適用となります。このガイドラインでは、対象を「販売情報提供活動」とし、広告3要件を満たすものに限定していません。これを薬機法の規制対象にも広げていくべきでしょう。

 一方、気になるのは、 内閣府の規制改革推進会議の動きです。医療用医薬品についても「薬機法上の適切な『情報提供』と『広告』の区別をより明確化することで、製薬企業が患者に医薬情報を直接提供することを一定の条件下で可能とし、患者による当該情報へのアクセス改善を図る」旨の提案がされています。情報提供と広告の区別は簡単ではなく、「情報提供」の名のもとに製薬企業による不適切なプロモーションが実質上広く行われる恐れがあります。その弊害から、世界でも米国とニュージーランドでしか認められていない医療用医薬品の消費者向け直接広告(DTC広告)が日本で広く行われる道を開くことに繋がる懸念もあり、注意が必要です。

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