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 厚労省は、積極的な接種勧奨を中止しているHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)について、2014年7月に情報提供用リーフレットを公表していましたが、このたび、2018年1月18日に改訂版のリーフレットが公表されました。今回の改訂について、厚労省は、最新の知見や審議会での議論をふまえて内容を更新したとしていますが、その内容には非常に問題があります。

 最大の問題点は、現在までに報告されている副反応の症状、つまり接種後に起こりうる症状が分かりやすく説明されていないことです。HPVワクチンの副反応症状は、運動系障害、感覚系障害、自律神経・内分泌系障害、認知・情動系障害という多岐にわたる多様な症状が重層的に現れることが明らかになっていますが、リーフレットではこれらの一部しか紹介されていません。

 特に、副反応の被害者の多くが苦しむ重大な症状の一つである記憶障害・学習障害の症状は、2017年12月の審議会で厚労省が示した改訂案では削除されていました。これに対するHPVワクチン薬害訴訟弁護団の批判や新聞報道があり、医療従事者向けリーフレットでは記載が復活されましたが、本人・保護者向けのリーフレットには依然として記載がありません。

 また、リーフレットには「接種後1か月以上経過してから発症している人は、接種との因果関係を疑う根拠に乏しい」と記載されていますが、これも最新の知見に反します。多数の副反応患者の診療にあたる医師らの研究で、接種から1ヶ月以上経ってから重篤な副反応を発症する場合があることが一致して報告されています。

 このほかにも、HPVワクチンは他の定期接種のワクチンと比較して副反応報告の頻度などが非常に高いことの記載がないこと、有効性の限界についての記載が不十分であること、記載された効果推計が不適切であることなど、多くの問題があります(詳細についてはHPVワクチン薬害訴訟全国弁護団ウェブサイト掲載の「HPVワクチン新リーフレットの全面修正を求める緊急要望書」をご覧下さい)。これでは、接種のメリットとデメリットを正しく判断することはできません。

 このような結果となった原因は、改訂の根拠とされている審議会の審議・検討のお粗末さにあります。審議会は、初期(2014年1月)にきわめて不十分な根拠に基づいて出した「心身の反応(機能性身体症状)」論に拘泥し、これに反する知見を無視する姿勢を続けています。まずは副反応の実態を正しく把握することから、やり直すべきです。

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