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●マイリスとその問題点  

 マイリス(成分名: プラステロン硫酸エステルナトリウム、別名デヒドロエピアンドロステロンサルフェイト、DHA―S)は、子宮頸管熟化不全に対する熟化促進剤として、1980年に注射剤が日本で承認された後、1997年には膣坐剤も販売され、日本の産科医療現場で広く用いられた薬です。当会議が調査対象薬として本薬を取り上げた2000年前後には初産婦の1/3に投与されていると推定されていました。
  
 開発時の治験論文などからは、臨床試験で投与対象となった妊婦は正常な妊娠経過をたどっていた妊婦であり、そもそも薬による頸管熟化が必要とされた妊婦ではなかったこと、かつ、プラセボ対照の試験で妊婦や新生児のアウトカムにおいて有効性は確認されていないことが明らかとなりました。また、海外においては、頸管熟化不全状態だけを治療対象とすることはなく、分娩誘発が必要とされる場合に頸管熟化を目的として、プロスタグランジン製剤(頸管熟化と分娩誘発の作用を持つ薬剤)を投与することが、当時から標準的治療とされていました。すなわちマイリスは、海外では承認されていない、日本だけで使用されているいわゆるローカル・ドラッグであるという点も注目された薬です。

●当会議の活動

 当会議は、1999年にマイリス班を編成して、治験論文結果に関する調査を行い、治験対象者や臨床試験方法、また有効性の疑問点や危惧される危険性などについて治験担当医師11名に質問書を、日本産科婦人科学会に公開質問書を送りましたが、いずれも回答不可との返事、または無回答という結果に終わりました。厚生省(当時)、製薬会社に対しては、製造販売の一時中止等を求める要望書を提出するとともに、妊婦への情報提供の必要性を考え、2000年11月には、公開会議「お産のくすりは安全? ―子宮頸管熟化促進剤を考える―」を開催しました。

●子宮頸管熟化剤使用の現状

 プラステロン硫酸エステルナトリウム製剤は、かつては先発品マイリスの他に、アイリストーマー、レボスパなどの後発品も市場にありましたが、2017年現在はレボスパ静注用のみとなっています。当会議が問題提起をした当時から、産科医療の現場には、有効性に疑問を持っているので使用しないという産科医がいる一方で、必要な薬であるという認識の産科医もいるという状況でした。 

 その後、日本の産科医療現場ではほとんど使用されなくなってきているという声も聞こえてきました。しかし、産科医療補償制度の原因分析報告書をみると、プラステロン硫酸エステルナトリウム水和物を使用したことが記録されている事例も散見されます。

 有効性に疑問が呈されかつ、危険性も指摘された薬が、産科医療現場で現在も使用継続されている現状は、見直されるべき課題であると思います。

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