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 医薬品は臨床試験で有効性・安全性などを確認して承認される。代替薬のない患者が未承認薬にアクセスできる基本的な筋道は臨床試験である。臨床試験に参加できない、命を脅かされるなど販売承認を待てない患者に、未承認薬へのアクセスを例外的に可能とする公的制度が「コンパッショネートユース」(CU) である。

 日本にはこれまでCU制度がなく、安全性面など問題の多い「個人輸入」に頼らねばならない状況にあったが、「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」による制度構築の提言を受け、2016年1月にようやくCUが実施された。
 
未承認薬へのアクセスについて国際的に最大の問題となっているのが、臨床試験を妨げがちなことである。患者が容易に未承認薬を使えれば臨床試験の被験者への応募や製薬企業の製品化意欲が減じ、臨床試験の実施が困難になる。

 未承認薬の治療使用は、
  〔ぞ鞠薬への患者のアクセスの保証、
  ⇔彎音邯海亮損椶鯔犬欧覆ぁ
  0汰汗確保 (リスク最小化)、
の相反する3要素の過不足のないバランスが要である。

 日本版CUは、「拡大治験」または「人道的見地から実施される治験」の名称で、患者集団(コホート)を対象としたタイプである。国内開発の最終段階である主たる治験 (効能効果と用法用量が一連の開発を通じて設定された後に実施される有効性安全性の検証を目的とする治験)の被験者の組入れの終了以降に実施される。そして治験の受け入れ基準を安全性の観点から「医学・薬学的に許容できると判断される範囲で緩める」。また、未承認の医薬品だけでなく、適応外薬、医療機器、再生医療製品も含めている。

 治験の枠内で実施するため法改正はなく、治験実施者の負担を軽減するためにGCP省令の一部改正が行われた。日本にはこれまで熱帯病、エイズなどで、治験薬として公的に供給する形で未承認薬へのアクセスを可能としてきた経験がある。治験とすることで患者の安全性確保を強化するとともに、患者の金銭負担が過大になることの軽減が期待される。健康被害に対しても、治験の範囲で実施されることからGCP省令に基づき適切な補償措置を講ずるとされた。他には実施を契機に、主たる治験と拡大治験の情報がインターネットで公開されるようになったことが特筆される。

 日本版CUは、臨床試験を妨げないことと患者の安全確保に良く配慮された制度と言える。しかし、将来的に整備すべき課題がある。ひとつは制度が法律に基づいたものとして位置づいていない。これには薬機法が未承認薬を規制していないことが関係する。また患者アクセスを主目的とするCUと申請に必要なデータを集める治験とは本来の性格が異なる。薬機法に未承認薬の規制を取り込むとともに、例外的アクセス制度に特化した独自の法令が必要と考える。拡大治験には、治験の厳格な規制の適用が実施者の過重な負担となり、患者アクセスの阻害につながっている問題があり改善が求められる。

 最後にCUが臨床試験を阻害しがちなことが国際的に問題となっていることに関係しては、医薬品の一層の使用適正化のために臨床試験の受け入れ基準をその医薬品が実地診療で用いられる範囲に拡大した第b相試験データを承認時に求め、CUを一層例外的な存在とする動きも欧州などにあることを記しておきたい。

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