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 ヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチンの接種後に失神・疼痛などの有害反応が多発したため、その安全性が疑われ、日本では2013年6月に積極勧奨を中止する措置がとられ、いまもその状態は続いています。この措置に対して、WHOワクチン安全性諮問委員会(GACVS)が「根拠薄弱なエビデンスに基づく政策決定は安全で有効なワクチンの使用を控えることに連なり、真の害をもたらしうる」と日本を名指しで批判する声明を発表したのは、2015年12月のことでした。GACVSは「HPVワクチン使用の推奨を変更しなければならないような、いかなる安全上の懸念も見出されていない」、「HPVワクチンの効果はすでに十分に確立している」と、安全性・有効性を強く主張しています。かねてHPVワクチンの安全性・有効性に疑問を感じ、その定期接種に反対してきた薬害オンブズパースン会議では、検討チームを作り、彼らが挙げている根拠論文をあらためてチェックしてみました。その検討結果をまとめたものが「WHO ワクチン安全性諮問委員会(GACVS)の HPV ワクチンに関する声明(2015 年 12 月 17 日付)に対する反論」で、2016年11月にWHOに送付しました。その内容を要約すると、次のようになります。

安全性について
(1)これまでに集積した国内の有害反応報告数とその臨床的特徴を要約し、

(2)厚生労働省が設置した専門家による審議会が打ち出した「心身反応」説に対する批判、

(3)GACVSが安全性の根拠として挙げている研究論文の批判的吟味:

  ‖召離錺チン接種者や一般住民と比べて、HPVワクチン接種者における自己免疫 疾患罹患率に統計的有意差がないという主張に対して自己免疫疾患の遺伝学的基礎を考慮していない分析方法への批判

  ⇒害反応報告の収集・分析に際して広く行われているコード化やデータ処理の過程に必然的に伴う重要情報の脱落、および既存疾患概念の枠組みの中で遡及的に分析することへの批判

  HPVワクチンは、このウィルスがもつさまざまな免疫回避機序に対抗するため、長期間にわたって高い抗体価を維持すべく設計された、従来型のワクチンとは全く異質のワクチンであり、その安全性についてはより慎重な判断を行うべきでした。

有効性について
(1)ハイリスクHPVに感染しても、(浸潤)がんの発症に至る者はきわめて少ないこと

(2)定期的な検診を受けていれば、早期に発見して適切な治療(手術・放射線・薬物治療)を行うことで相当数の患者は救命可能であること

(3)HPVワクチンの有効性を98〜100%という数値(相対リスク減少)で示すことへの批判を行いました。

 これらの点を総合すると、現状において、日本政府がHPVワクチンの接種勧奨を事実上中止しているのは妥当な判断です。日本では、欧米諸国に比べて子宮頸がん検診の受診率が格段に低いことを考えると、問題のあるこのワクチン接種を勧めるよりは、同性による検査や、検体の自己採取による提出法を広めるなど、検診を受けやすくすることの方が経済的であり、より有効な選択です。GACVSが、HPVワクチン接種後の有害反応について自ら調査をしていないにもかかわらず、日本という一加盟国の個別政策を批判し、その権威を利用して特定の政策を押しつけようとしているのは、保健医療システムの強化を究極目標として掲げているWHOに相応しくないことですので、この点についても抗議しました。

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