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●ベロテックエロゾルとその問題点
 ベロテックエロゾル(日本べーリンガーインゲルハイム社、1985年承認、臭化水素酸フェノテロール、処方薬)は気管支喘息の治療薬で、発作時に定量噴霧式吸入器(MDI)を用いて吸入し、気管支を対症療法的に拡張させる効果がありますが、心毒性があり心臓死を招く危険のある薬剤です。
 ニュージーランドでは1989年に問題となり保険適用薬から除外して事実上使用されなくなり喘息患者の死亡率が半減しましたが、日本では当会議が発足時(1997年)に告発するまで、何らの対応もなされていませんでした。

●当会議の活動と社会の対応
 当会議は、発足にあたり本剤の評価を行い、使用の一時中止と安全性の検証を求めて、企業と厚生省(当時)に問題提起しましたが、企業は当会議の主張に対し科学的根拠を否定し、厚生省は緊急安全性情報の発信で十分との対応でした。
 しかし、メディア報道の影響もあって喘息患者や臨床医たちの間でも議論が広まり、本剤の使用は告発直後から激減傾向を示しました。

 一方で企業は2年後に1回の噴霧量が半分の新製品へと変更し、他方で日本アレルギー学会等の臨床医たちは喘息患者への治療法を抗炎症薬による長期管理中心へと変更し、喘息患者の死亡防止の取組を開始しました(医学界のこの取組については、小児科医の松井猛彦氏が2012年第62回日本アレルギー学会での「教育講演3・喘息死」において『わが国の喘息死は、近年、着実に減少…これには…学会、国や地方自治体、喘息患者会などのNPO団体などの連携による喘息死への取組などが大きく貢献していると推測されるが、その動機付けとしてマスコミを巻き込んだfenoterol MDIに関する大論争が大きな影響を与えた』と回顧しています)。

●活動の成果
 喘息患者の死亡者数は、本剤が承認された1985年以降急増(数年で約2倍)しましたが、当会議の告発直後(本剤の使用量が半減して)約60%へと減少しました。その後の傾向(1999年と2000年の各5ヶ月間の比較)でも販売量の減少(35%減)と喘息患者死亡数の減少(24%)が連動しています。
 なお、噴霧量半減の新製品は現在も販売されていますが、あまり処方されていないようです。

●番外編
 この問題は番外編として2つの出来事を誘発しました。
 1つは、企業が告発2年後に発売した新製品(噴霧量半減)に関する情報の開示請求(請求者は当会議の調査委託先である医薬品治療研究会)に対し企業がこれを拒否したため、企業の医薬関係者への情報提供努力義務(薬事法第77条の3)に違反するとの論争に発展しました(結果的には厚生省の指導もあり、企業から情報の一部が開示されました)。  
 もう1つは、本剤使用中に死亡した喘息患者の遺族による医薬品副作用被害救済制度(遺族年金支給)の適用(死因は本剤)につながったことです。

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