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●原因薬  
 肺がん用抗がん剤イレッサ(成分名ゲフィチニブ)。アストラゼネカ社の製造販売で、2002年7月に世界で最初に日本で承認された。承認時の適応は「手術不能又は再発非小細胞肺癌」。
 延命効果を確認する第形蟷邯海鮠鞠Ц紊帽圓Δ海箸鮠魴錣望鞠Г気譴燭、その後、一部の患者にしか延命効果がないことが判明し、2011年に「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌」に適応が制限された。

●被害  
 販売開始直後から、イレッサ服用後、急速に悪化し呼吸困難などを引き起こす致死的な間質性肺炎の副作用報告が相次ぎ、承認から2年半で報告死亡者数は557人に達した。特に2002年 10月15日に厚労省の指示で緊急安全性情報が発出されるまでの3か月間の報告死亡者数が162名にのぼるなど、販売初期に被害が集中した。

●被害発生の経過
 イレッサについては、承認の時点で、死亡例を含む重篤な間質性肺炎や急性肺障害の症例が国内外で報告されていたが、第1版添付文書では間質性肺炎を『警告』欄ではなく『重大な副作用』欄に記載し、致死性も明記されていなかった。
 その一方で、アストラゼネカ社は、自社提供の事実上の広告記事に専門医を起用するなどして、イレッサはがん細胞のみをねらい打ちにする分子標的薬であり、副作用が少ない画期的な新薬であるとのプロモーション活動を行った。その結果、メディアを通じて『夢の新薬』とのイメージが形成され、販売開始直後から大量に使用されて、副作用被害の多発をもたらした。 
 なお、米国・EUは延命効果の証明を要求し正式承認を与えなかったため(EUは09年に適応限定し承認)、大規模被害は日本だけだった。

●訴訟
 2004年、大阪地裁と東京地裁で提訴。訴訟では、承認審査段階で間質性肺炎とみられる症例が多数見落とされていたことや、イレッサを推奨していた専門医とアストラゼネカ社の経済的関係などが明らかとなった。
 2011年2月の大阪地裁判決、同年3月の東京地裁判決では、イレッサの添付文書に指示警告上の欠陥があるとして企業の責任が認定され、東京地裁判決では国の責任も認められた。しかし、控訴審の東京・大阪高裁判決は指示警告上の欠陥を否定、2014年4月に最高裁も同様の判断を示し確定した。
 最高裁は、第1版添付文書の記載でも専門家である医師に対する注意喚起としては十分であるとしたが、販売初期にあれだけの被害が集中した事実を考えれば、「医師等の1〜2人が読み誤ったというのであればともかく、多くの医師等が読み誤ったと考えられるときは、医師等に対する情報提供の方法が不充分であったと見るべき」とした東京地裁判決が説得力を持つ。

●事件後の制度改正、検証課題
 未曾有の規模の副作用死亡者をもたらした薬害イレッサの教訓は、抗がん剤の承認に際しての第形衫彎音邯海慮饗Р宗∋堡慮緜敢困箸靴討料肝稘佻芯敢困慮饗Р宗⇒益相反ルールの策定など、多くの制度の改正や創設をもたらした。
  さらに、原告・弁護団は「抗がん剤による副作用被害の救済制度の創設」を提案し、この考えは最高裁判決の中でも言及されたが、未だ実現には至らず、今後の課題となっている。

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