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 精神科外来診療で薬を処方した場合、精神科継続外来支援・指導料が算定されますが、2014年度の診療報酬改定より4種類以上の抗精神病薬を投与した場合はそれが算定できなくなりました。  
 諸外国に比べ多剤併用が多い日本の精神科処方の是正を期待した方策と言えるでしょう。
 2005年と少し古い資料ですが、米、豪、ニュージーランド、英国の単剤処方(抗精神病薬は1種類だけの処方)が80%以上に対して日本は20%にも至っていません。
 多種ある抗精神病薬の強さは、クロルプロマジン換算という手法を用いて、共通の尺度で評価でき、この数値が1000咾鯆兇─大量と言われる域になると薬の副作用が生じやすくなります。多剤併用が好ましくない理由は、単剤処方に比べて大量になりやすいためです。この点でも日本は、クロルプロマジン換算が1000咾鯆兇┐觸菠の多さが他国と比べて突出しています。
 効果の評価や副作用の点で多剤大量療法からの脱却に異論はありませんが、精神科系学会(医学、薬学)が単剤化を推奨すると同時に非定型抗精神病薬の使用を促していることに違和感を覚えます。  
 非定型抗精神病薬とは、従来から使われてきた抗精神病薬(定型抗精神病薬)に比べて副作用が少なく、感情鈍麻や意欲低下などの陰性症状にも効くとして開発された薬で、第二世代抗精神病薬とも言われます。1989年米国でクロザピン(商品名クロザリル)が再発売されたのを皮きりに、1996年リスペリドン(リスパダール)、2001年オランザピン(ジプレキサ)などが発売され、統合失調症の薬物療法を席巻しています。
 しかし、血糖値上昇や体重増加の副作用、薬の鎮静作用が過剰になっているのを陰性症状と判断して、更に薬の種類や量が増えるなどの問題が出ています。多剤大量処方となれば、定型も非定型も安全性における悪影響は同じです。更に、非定型抗精神病薬は高額であり、離職を余儀なくされ、収入が激減した患者さんにとっては痛手です。非定型抗精神病薬が推奨され、それをわざわざ使用することに疑問を持たざるを得ません。
 数年前、精神科に精通した先輩薬剤師に、海外の単剤化は実際どうなのか、非定型抗精神病薬はやはり良いものなのか、と聞いてみたところ、これまで見聞きしたのとは違う答えが返ってきました。“単剤化にはなっていない。EUで3剤位、世界でも3―5剤で落ち着いている。ただしクロルプロマジン換算で200―300咫そして、定型薬と非定型薬で副作用や効果に差はないという報告が2005年以降いくつも出ている”というものでした。  紹介された報告や、その関連報告に私の気持ちの靄は幾分晴れましたが、依然として権威ある先生方の非定型薬善玉論(それと比較しての定型薬悪玉論)は多くの医療関係者に吹聴されています。
 今回のこの記事は、この状況に対し、気弱な抵抗にしかならないと思いますが、誰かしらの目にとまれば有りがたいです。

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