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 2014年12月、HPVワクチン(「子宮頸がんワクチン」)について、日本医師会と日本医学会の合同シンポジウムが開催されました。シンポジウムでは、このワクチンを推進する立場の医師と批判的な立場の医師計8名がプレゼンテーションをしました。このシンポジウムの開催は、このワクチンが科学的にも評価が大きく分かれるものであることを認めざるを得なかったということを少なくとも示しています。

 ところで、シンポジウムでは、会場から厚生労働省の副反応検討部会の座長が指定発言をする一場面がありました。その際、座長が「サイエンスに基づくべきであり、個々の副反応症例のストーリーから問題を掘り起こしてはいけない」という趣旨のことを強い口調で述べていたのが忘れられません。

 実は、「ストーリー」という言葉は、当会議の昨年7月のシンポジウムにおけるヘルクスハイマー先生の講演「患者不在の医薬品監視」のキーワードのひとつでした。先生は、これまで規制当局や製薬企業、医薬専門家が作り上げてきた医薬品監視の方法論には、肝心の患者や一般市民の利益やニーズが反映されていないと指摘し、ストーリーを重視することの必要性を説いたのです。

 被害者に起こったこと、ストーリーは医薬品監視の原点です。それを軽視する座長の発言は、医薬品監視のあり方に関する本質的な問題を端的に示すものだと言えそうです。

 ストーリーを大切に活動していきたいと思います。今年もよろしくお願いいたします。

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