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●原因薬
 人工的に子宮の収縮を引き起こす薬で、最近では「子宮収縮薬」と呼ばれる。陣痛が始まっていない妊婦に対して陣痛を起こさせる目的で使用すれば「陣痛誘発剤」または「分娩誘発剤」、始まっている陣痛を強めさせる目的で使用すれば「陣痛促進剤」とも呼ばれる。
 現在販売されているものに、点滴注射薬であるオキシトシン(アトニン−O/あすか製薬・武田薬品、オキシトシン注射液/富士製薬)とプロスタグランディンF2α(プロスタルモンF注射薬/小野薬品)、さらに経口錠剤のプロスタグランディンE2(プロスタグランディンE2錠/富士製薬・科研製薬)等がある。

●被害
 子宮収縮薬は、感受性の個人差が200倍以上あるとされており、感受性の強い妊婦がこの薬の投与を受けると、非常に強過ぎる陣痛(過強陣痛や硬直性子宮収縮)が母子を襲い、母体には、子宮破裂や弛緩出血、DIC等による死亡、胎児には、陣痛の間欠期が無くなるなどの理由から胎盤を通した酸素の供給が十分にできなくなる低酸素脳症から、胎児仮死、胎児死亡、重度の脳性麻痺などが頻発してきた。
 長年にわたり、「血管確保の目的で点滴をします。」「子宮口を柔らかくする薬です。」等の説明だけで、妊婦が知らない間に投与されてきたため、本当は被害者だが被害だと気付いていないケースも非常に多く存在すると考えられる。

●被害発生の経過
 1974年頃から、産婦人科医の団体は、子宮収縮薬による医療事故や、それによる医師賠償責任保険の支払額が増えていることから、添付文書に記載されている最大使用量の半分以下しか使用すべきでない、添付文書で認められている筋肉注射や薬剤の併用などもすべきでない等の指導をしていたが、1992年に被害者団体が当時の厚生省と交渉を始めるまで、それらの内容に沿った添付文書の改訂はなされなかった。
 1998年に発足した「陣痛促進剤による被害を考える会」が把握している重篤な被害は、死産及び仮死で生まれその後死亡した児が170人、仮死から脳性麻痺となった児が136人であり、母親では子宮破裂が78人、死亡が53人、寝たきりの状況になっている人が6人、身体障害者となっている人が4人となっている。

●訴訟
 企業や国に対する訴訟は現在のところなされていないが、被害事例ごとの医療訴訟は数多くなされてきた。医療問題弁護団の調査では、1989年以降の出産で、胎児が死亡したり脳性麻痺になったケースのうち、99年4月から07年6月までの間に医療機関側の責任を認めた43件の医療事故判決の4割強で子宮収縮薬が使われていたことがわかっている。

●事件後の制度改正、検証課題
 2010年6月にも、添付文書に「必要性及び危険性を十分説明し、同意を得る」ことの義務づけなどの大幅改訂がなされた。しかし、海外の添付文書には副作用と記載されており、かつ被害報告が多い「脳内出血」と「胎盤早期剥離」は、被害者団体の長年の交渉にもかかわらず、副作用欄に記載されていない。そのために、それらの症例が被害として認められていない問題について、被害者団体は厚労省及びPMDAとの交渉を続けている。

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