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2014年7月27日、東京大学鉄門記念講堂において、シンポジウム「医薬品の安全監視を考える〜『子宮頸がんワクチン』被害からの問題提起」を開催しました。
第1部と第2部に講演、第3部にパネルディスカッションという3部構成で行われたシンポジウムの報告です。


基調講演「患者不在の医薬品監視」を聴いて

 これまでの薬害事件を振り返ってみると、大勢の犠牲者が出るまで、患者の訴えや症状が気づかれずに放置されることが多い。どうしてそんなことになってしまうのか? 市販後モニターやリスク・マネジメントの重要性が説かれながら、あまり改善がみられないのはなぜか? 解決するにはどうすれば良いのか?

 ヘルクスハイマー博士による基調講演は、新薬の研究・開発から、承認審査、市販後モニター制度、臨床現場の問題、情報提供と教育のあり方、情報源とその信頼性、治療ガイドラインや治療勧告のあり方、これらの議論を通じて浮かび上がってくる問題解決への提言など、具体的な事例を挙げながら平易な言葉でゆっくりと解き明かし、医療専門職だけでなく一般市民にとっても充分に聴き応えのある一時間だった。

 ファーマコビジランス(Pharmaco- vigilance:医薬品監視)とは、医薬品による有害反応を収集・検出・評価・監視し、その発生を防止するための活動であり、その方法論はこれまで国の規制当局・製薬企業・医薬専門家たちが協力して作り上げてきた。しかし、そこには肝心の患者・一般市民の利益やニーズが反映されていない。一部の患者が被る深刻な副作用被害とその評価ならびに行政対応の間には大きなギャップがあり、その溝はいまだに埋めることができていない。

 医薬品監視が始まってから半世紀を経た今日、その構造を患者・一般市民のために構築し直す必要があり、研究・保健医療サービス・市民教育を担う組織がこれに対応しなければならない。製薬企業と薬務規制当局の協力はもちろん必要だが、どうすることが最も一般市民の利益に適うかの決定を彼らに委ねることはできない。こうした改革を速やかに行うためには、各国が協力すると同時に、それぞれが良い意味で競争することが望ましいというのが、講演の最後を締めくくる言葉だった。

 ヘルクスハイマー博士は、著名な臨床薬理学者で、医薬品情報誌DTBの初代編集長。患者の語りデータベース・ディペックスの誕生に関わり、英国コクラン・センター名誉フェローであり、88才の今も多くの国際医学雑誌に寄稿し、常に患者の視点から医療のあり方を問い続けている。

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