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●原因薬
 一般名「乾燥弱毒生麻しん(M)おたふくかぜ(M)風しん(R)混合ワクチン」。各ワクチンのメーカー3社が統一株MMRを製造・販売。1988年承認、1989年4月から定期接種開始。直接の原因は阪大微生物病研究会製造のおたふくかぜワクチン。

●被害
 接種開始から1993年4月の接種見合わせまでに無菌性髄膜炎の報告は1754例(概ね千人に1人)。しかし、おたふくかぜの自然感染後に髄膜炎が起こることから髄膜炎の副反応を予測していた由上修三らの調査では、1/217の発症率。髄膜炎は、発熱、嘔吐、吐気、項部硬直等の症状で、2週間程度の入院を要するものの多くは軽快したとされるが、長期予後はフォローされていない。予防接種後健康被害救済制度による被害認定は史上最大規模の1041人に及び、難聴、小脳失調症、急性脳症、てんかん、知的障害などの重篤例も含まれる。死亡認定は3人(他に認定されなかった死亡3人)。

●被害発生の経過
 1981年市販開始の阪大微研会製おたふくかぜワクチン(単剤)の接種後やMMRの治験でも髄膜炎が発生していたが、ワクチンとの因果関係は否定されていた。しかし、旧国立予防衛生研究所が新たに開発した株鑑別法により、それまでの髄膜炎の多くがワクチン由来と判明し、「MMR推進に際し、髄膜炎発症を監視すべき」ことを定期接種開始直前に発表した。また、阪大微研会製おたふくかぜワクチンを含むMMRにより、カナダでは少数ながら髄膜炎が発生し、1987年以降使用中止、回収などの規制がなされていた。しかし、旧厚生省は何らの対応なく接種を開始し、被害を発生させた。
 1989年12月、厚生省は、麻しんワクチンを原則とし、髄膜炎等の説明の上でなお保護者が希望する場合にはMMRを使える旨、方針変更してMMRを継続した。これは、日本脳炎ワクチンやHPVワクチンの「積極的勧奨中止、希望者には接種」という牋汰澗从瓩寮萠磴箸い┐襦その後、ワクチンが家族内感染を起こした等の理由で1993年に「当面接種見合わせ」となった。

●訴訟
 1993年に死亡2児の両親が提訴。後に、重い障害を負った被害児と両親も提訴。3家族7名の原告団。2003年3月の大阪地裁判決は、阪大微研会が承認時と異なる製法のおたふくかぜワクチンを製造販売した(薬事法違反)ことが、髄膜炎を多発させ、国には条理上、企業への指導監督責任があったとして、双方の賠償責任を認定。2006年4月の大阪高裁判決も一審判決をほぼ踏襲するが、一審後に阪大微研会が賠償全額を支払ったため、損害は填補されたとして国に対する請求は棄却。国の責任についての最高裁の判断を経ないまま訴訟は終結した。そのため、国は、「判決は認めがたく、謝罪もできない」として責任を認めていない。

●事件後の制度改正、検証課題
 国は、阪大微研会の薬事法違反について処分を行ったのみ。事件の検証なく、行政資料の廃棄と風化が進む一方、ワクチン・ギャップ解消の象徴であるHPVワクチンの被害多発で、MMRの轍を踏みかねない現状である。

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