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●原因薬
 乾燥濃縮血液凝固第式子製剤及び乾燥人血液凝固第衆子複合体製剤(高濃縮血液製剤)。血友病は、血液中の凝固因子が先天的に欠乏または不足しているために起こる出血性の疾患である。血友病の補充療法薬として開発された高濃縮血液製剤は、加熱製剤に切り替わる1985年まで、米国由来の売血によるプール血漿を原料とし、ウィルス不活化処理を実施していないなどウィルス感染の危険が知られていた。

●被害
 血友病患者は、補充療法として使用した高濃縮血液製剤の原料血漿の中に含まれていたエイズウィルス(HIV)に感染し、当時根治療法がなかったエイズを発症し数百名もの血友病患者が命を落としていった。日本国内の血友病患者約5000名のうち、高濃縮血液製剤によるHIV感染者は1800名とも2000名ともいわれている。また、血友病患者はメディアのエイズ報道を契機として激しい差別や偏見にさらされ、社会生活・家庭生活を崩壊させられるという被害を受けた。

●被害発生の経過
 1982年7月以降、米国では血友病患者がエイズ症状を示す症例が報告されエイズから血友病患者を守るための方策に関する勧告が出された。日本においても1983年に「エイズの実態把握に関する研究班」が厚生省(当時)に設置されたが、国内の血友病患者のHIV感染を防止するための措置が講ぜられることなく、加熱製剤が製造承認される1985年まで、非加熱の高濃縮血液製剤の販売が継続され、感染被害が拡大していった。

●訴訟
 1989年5月に大阪地裁、同年10月に東京地裁で、国と製薬企業5社を被告とする訴訟が提起される。1995年10月、両地裁は、被告らの責任を明示し、和解による早期解決を当事者に提唱する旨の「和解勧告に当たっての所見」を提示、1996年3月にも第2次和解案及び所見を提示し、1996年3月29日に和解が成立する

●事件後の制度改正
 和解成立後の1996年、医薬品の臨床試験から承認審査、市販後に至るまでの安全性確保を目的とする薬事法改正が行われた。さらに、薬害エイズ事件を契機として、血液製剤の安全性向上に加え、安定供給の確保を図るための法的枠組みの整備が求められていたことを受け、2002年には薬事法とともに「採血及び供血あっせん業取締法」が改正され、「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(血液法)が制定された。これにより、生物由来製品のうち血液製剤について、安全対策は薬事法、安定供給と適正使用は血液法に基づいて、それぞれ施策が講じられることになった。

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