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 オランダの保険審議会(CVZ)が「No Cure No Pay」を提唱して、実験的に行うというニュースが入ってきました。対象となった最初の薬は喘息治療薬で、この薬は10人に3人は効かないとされていますが、製薬企業は改善が見られない患者に対して費用を償還する予定とのことです。「効かなかったから、お金返して」というわけです。普通の商品の場合は、消費者として当たり前かもしれませんが、ちょっとびっくり。

 ここまでとは行きませんが、国レベルで、保険の適用の場面において、薬の費用対効果を評価していこうという流れが世界的に加速しています。保険の適用対象とするか、あるいは保険でカバーされる価格(保険償還価格)をどう設定するのかという場面で、費用対効果を要素として重視していくという流れです。背景には医療費が国家財政を圧迫しているという各国共通の課題があります。

 英国の国立の医療技術評価機構NICEの活動が有名ですが、ドイツ、フランス、イタリア、そして韓国でもこうした制度が導入されています。実は、日本でも、現在、中央社会保険医療協議会の費用対効果評価専門部会で、この制度の導入に向けた議論が行われています。

 これらの制度については、医薬品へのアクセスを阻害する可能性がありますので、製薬企業だけではなく、患者団体の反対などもあります。しかし、医薬品の評価は、リスクとベネフィットのバランスですから、適切な制度設計をすれば、医薬品の安全性確保にも役立つのではないでしょうか。この問題、薬害オンブズパースンも独自の視点で注目していきたいと思います。

 なお、薬害オンブズパースンでは、ホームページの「注目情報」のコーナーで、2007年頃から、この問題に関する各国の動きを数多く紹介しています。ぜひご覧になってください。

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