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 これは犬のはなし。実は我が家の愛犬が膀胱がんになった。今ピロキシカムとエンフロキサシンを飲ませている。ピロキシカムは消炎鎮痛薬、長期服用で消化管出血や腎障害などの副作用が知られている。エンフロキサシンは体内で代謝されてシプロフロキサシンに変わるニューキノロン系抗菌薬だ。動物用医薬品で要指示薬に指定されている。

 なぜ、この2剤を飲ませているかというと、ピロキシカムは膀胱上皮移行がんを抑制する効果があるのだそうで、ネットでサーチすると結構ヒットする。文献も紹介されているが、ヒトでの報告は見あたらない。エンフロキサシンはというと、膀胱炎を「予防」するためだそうだ。うーん…。

 動物に使う医薬品は、動物用医薬品というが、種類が少ないせいか、多くは人間用の医療用医薬品を動物に適用させている。ピロキシカムは人間用なのだ。4週ほど飲ませたころ、黒い便が続き、もしや消化管出血かとしばらく服用をやめていたが、今度は血尿が始まり、しかたなくこわごわ再開し、今は落ち着いている。かわいい家族を人質ならぬ“犬質”にとられては、なかなかきっぱりといらないとはいえないもので、情けなくもあり歯がゆくもありという状態だ。担当の獣医さんはとても親身にケアをしてくださっているのだが、ベストケアとはいわないまでもベターな選択肢がみつからないまま、釈然としない思いはぬぐえない。

 動物用医薬品は厚生労働省ではなく農林水産省の管轄だが、薬事法に則った「動物用医薬品取締規則」というのが定められ、情報提供の義務や副作用の報告義務もある。動物用医薬品以外の医薬品は薬事法の規制の対象である。であるなら、製造販売が許可された適応、使用方法というのがあるわけだが、動物に使用する適応も用法も設定されていず、そもそも自由診療なのだから、適応も適応外もないのだろうか。抗菌薬の長期予防投与は、動物の世界だけではおさまらないのだし、そうだ、次回はちゃんと言おう。

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