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 2011年11月15日、薬害イレッサ東日本訴訟の控訴審判決が、東京高等裁判所において言い渡されました。高裁判決は、イレッサの初版添付文書に製造物責任法上の「欠陥」があったとして国及びアストラゼネカ社の責任を認めた1審東京地裁判決を取り消し、原告の請求を全て棄却するというきわめて不当なものでした。
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 最も問題なのは、添付文書の記載が十分であったかどうかを判断するにあたって、事前に得られていた副作用症例について、イレッサ投与との因果関係の厳格な判定を要求している点です。
 1審東京地裁判決は、イレッサ承認前に、イレッサとの因果関係が否定できない間質性肺炎の副作用症例が23例(うち死亡例13例)存在したと認定し、これに照らして添付文書の記載の当否を判断していました。これに対し、東京高裁判決は、製造物責任法上の「欠陥」の判断にあたっては、因果関係が「否定できない」かどうかを検討するだけでは足りず、因果関係が「ある」といえるかどうかまで検討が必要とし、1審東京地裁判決が認定した副作用症例には、イレッサ投与と死亡との因果関係が「ある」といえる症例は1つもないとして、これらを全て安全性評価から切り捨てるに等しい判断をしています。
 たとえそれが真に医薬品の副作用であったとしても、個々の症例について因果関係が「ある」と断定することは困難であることが普通であり、そのため、実務では、因果関係が「否定できない」有害事象を「副作用」と定義して報告義務を課し、それに基づいて医薬品の危険性の評価を行っています。東京高裁判決は、このような医薬品安全対策の基本を否定するものです。
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 また、東京高裁判決は、イレッサを使用する医師は「癌専門医又は肺癌に係る抗癌剤治療医」であるとし、そのような医師であればイレッサ初版添付文書の記載でも危険性を認識できたはずであるとしています。これは、いわば、専門領域の情報を常に入手し、添付文書の隅から隅まで頭に入れている『理想の医師』だけがイレッサを投与する状況を前提に、添付文書の内容を考えればよいとするもので、このようなやり方では現実の被害を防ぐことはできません。この点については、「医師等の1〜2人が読み誤ったというのであればともかく、多くの医師が読み誤ったと考えられるときには、医師等に対する情報提供の方法が不十分であったと見るべき」と述べる1審東京地裁判決に、はるかに説得力があるといえます。
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 さらに東京高裁判決は、有効性の面でも、イレッサの延命効果を否定した多くの第形衫彎音邯海侶覯未冒瓦触れずに、腫瘍縮小効果を根拠に有効性を認定するという、初歩的な誤りを犯しています。
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 このような不当な判決の確定を許
すことはできませんので、原告団は上告及び上告受理申立を行いました。また、西日本訴訟(大阪高裁)では、5月25日に控訴審判決が言い渡されます。
 医薬品安全対策の基本を無視する東京高裁判決に対しては、特に、医療専門家の方々から厳しい批判の声を上げて頂くことが重要と考えています。今後とも、ご支援・ご協力をお願い申し上げます。

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