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 2002年7月に承認されたイレッサは2010年3月末までに少なくとも810人の副作用死を発生させました。薬害イレッサ訴訟は、この被害を生み出したアストラゼネカ社と国の責任を問う訴訟として2004年に東京と大阪で提起された損害賠償請求訴訟です。
 東京で3名の患者、大阪で4名の患者のケースが争われています。約6年に及ぶ審理では、原告側から福島雅典先生、浜六郎先生、別府宏國先生が証言台に立ち、臨床試験の段階で既に間質性肺炎等急性肺傷害による副作用症例が多数みられたのに被告らがこれを無視・軽視してきたこと、承認にあたって添付文書に警告欄を一切設けず全例調査も付さないこと、などこれまでの薬害の教訓を踏まえた安全対策が全く取られてこなかったこと、を次々に明らかにしてきました。
 これに対し、被告側は、販売が開始され被害が発生するまでイレッサの危険性はわからなかったとし、被告アストラゼネカは、被害は『育薬』(承認後の研究によって薬をより良いものに育てるという趣旨)の過程で発生したやむを得ないものだ、とさえ述べています。『育薬』の名の下に未曾有の副作用死の責任を回避しようとする姿勢には怒りを禁じ得ません。
 訴訟は、大阪地裁が本年7月30日、東京地裁が8月25日に結審し、大阪は来年2月25日が判決言い渡し期日として指定されています(東京は未定)。
 私達がこの訴訟を通じて実現したい全面解決要求の中味は次のとおりです。

『 全面解決要求事項 』
1 国とアストラゼネカ社は、薬害イレッサ事件に対する責任を認め、被害者・遺族に謝罪すること
2 国とアストラゼネカ社は、薬害イレッサ事件の被害者・遺族に対し、損害を賠償すること
3 国は、イレッサの再審査にあたり、少なくともイレッサの適応をEGFR遺伝子変異が陽性の患者に限定したうえで、今後の投与症例につき全例登録を義務づけるとともに、EGFR遺変異陽性患者に対する、全生存期間を主要評価項目とした比較臨床試験を義務づけること
4 「がん対策基本法」に「がん患者の権利」を明記し、これに基づくがん医療体制を整備するにあたり、薬害イレッサ事件の教訓を生かすこと
5 国は、抗がん剤による副作用死を対象とする副作用被害救済制度を創設すること
6 国とアストラゼネカ社は、薬害イレッサ事件を検証し、薬害の再発防止に取り組むこと

 この裁判の意義は、被害の償いはもとよりですが、それにとどまるものではありません。
 「夢の新薬」と言われ正しい情報を知らされずに服用した患者は、がん患者としての「知る権利」が侵害されたのです。がん患者の命の重さを問い、がん患者の権利を確立することが重要です。また、副作用死救済制度を創設することを通じ、抗がん剤の副作用死を軽減・防止していくことがどうしても必要です。
 今年中に大きな動きを作り全面解決を果たしたいと願っています。ぜひ、ご理解と御支援をよろしくお願い致します。

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