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 ここ最近、10ヵ月の息子へのポリオ(流行性灰白髄炎)ワクチンの接種について、思い悩む日が続いた。同じように悩む何人もの同世代の友人から相談もあった。
 日本で使われているポリオワクチンは生ワクチンである。このことは、生ワクチンによるポリオ発症の可能性があること、ポリオワクチンの接種を受けた子どもの便から二次感染が起きる可能性があることを意味する。
 日本では1980年以降、野生株によるポリオの発生はないと言われているが、ワクチンによる発症や、ワクチン接種者からの二次感染が毎年起きているという。もちろん生ワクチンによる発症リスクはポリオだけが特殊なわけではないだろうが、ポリオが重篤化した場合の麻痺症状の重さは決して無視することはできないし、毎年数例だからうちの子は大丈夫、とはとても言えない。不顕性感染があることを考えれば、二次感染の頻度も実際は想像以上なのではないだろうか。しかし、こういった危険性についてはほとんど説明される機会がないか、説明されたとしても、これらのリスクは気にしなくてよい程度のものだというくらいの内容である。
 諸外国では二次感染のリスクのない不活化ワクチンが導入されているという。日本ではどういう事情かなかなか導入されず、自費で輸入不活化ワクチンを受ける人もいると聞く。しかし、積極的に未承認薬を使うことへは抵抗がある。
 友人や私を含む昭和50年から52年生まれの人は抗体保有率が低く、生ワクチンを受けた子からの二次感染のリスクが高いため、親の接種を勧める意見もある。しかし、生ワクチンの危険性はいったんおくとしても、そもそも生ワクチンを受けられる医療機関が限られており、どういった選択肢があるのか一見してよくわからないというのが実態だ。保健所に問い合わせた友人は、騒ぎすぎだというニュアンスの対応をされたと聞く。
 話は戻って、結局、保育園に通う息子は、二次感染のリスクがある以上、他の子と同時期に受けさせなければならないと判断し、複数回設定されていた集団接種の初回を選んで接種し、自宅でのオムツの処理は私だけが行い、手洗いと部屋の掃除を徹底するという選択をした。夫と私の接種は情報収集が間に合わなかったというのが実情だが。
 友人の中には不活化ワクチンを選択した人もいるし、私と同様の選択をした人もいるが、集団接種会場で、どれだけの人がこういった問題を認識して接種を選択しているのだろうと思うと、暗澹たる気持ちになった。
 子どもが大きくなったときに、きちんと説明できる選択をしたいと、色々と調べれば調べるほど、問題だらけであることに気付く。生ワクチンを選択しても、輸入ワクチンを選択しても、すっきりしない現状は明らかにおかしい。
 自己決定をするには正しい情報を得ることは不可欠だ。ワクチンのリスクがどういうものなのか、接種後どういった症状に気をつけるべきなのか等、適切に情報提供されなければ、考える必要性にも気づかない人も多いだろうと思う。任意接種の種類も増えている昨今、日々自分から情報にアクセスしていかないと、子どもは守れないのだと、接種から1ヶ月、せっせと手洗いと掃除をしながら考える毎日である。

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