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 一昨年以来、一般用医薬品のインターネット販売に反対する運動に、全国の消費者団体とともに取り組んできた。幅広い団体がこの活動に参加したのは、なんといっても、ネット上での様々な商品やサービスの販売の現状に危機感をもった結果である。
 例えば、薬害オンブズパースン会議が取り上げている抗うつ剤「パキシル」にしても、ネット上の個人輸入代行業者を介せば、医師に相談することもなく購入可能である。不安や緊張をふせぐ、気持ちが楽になるという説明のみのサイトも存在する。いずれにしても、個人輸入後の責任は購入者にあることを強調するサイトが多い。
 これは、医薬品に限ったわけではなく、国内の法律を守り、適正な手続きと情報提供で様々な商品やサービスを販売するサイトが存在すると同時に、違法であったり、不適正な販売方法や不十分な情報提供であったりと、消費者の誤認を誘うサイトがまたたくさん存在するのも現実である。なんとかしなければならないというのが、消費者団体の当然の認識である。
 加えて、医薬品というリスクの高い商品の販売となると、より丁寧な対応が必要になることは言うまでもなく、だから対面販売の原則を支持し、専門家のより強い責任を求めることになる。
 この間の運動で痛感した二点をあげたい。一つは、一般用医薬品でもリスクがあることがあまりにも知られていないことである。医薬品のネット販売の是非についてあちこちで話題にすると、たかが風邪薬位のことになぜそんなに神経質になるのか、自己責任の範囲でよいのではないかとの意見をよく耳にする。まず、どんな医薬品にも益があれば害もあるということを、消費者がきちんと認識するよう、適切な情報提供が急務である。これは、国も私達監視組織も消費者団体も、そして製薬会社、医薬品の販売の現場も、それぞれに責任をもって伝えていくことが大切である。
 そしてもう一点、では、対面販売の現場は適正な情報提供を行っているのかということである。これも、一般用医薬品のリスクについての認識の薄さが悪い影響を与えているのではないかと思われる。いろいろな店舗での販売状況を見ていると、決して満足のできる状況ではない店が多く見られる。対面販売の重要性を説くのであれば、現状の対面販売で十分な情報提供が行われているか、積極的に監視し、声をあげていくことも大切な消費者の役割といえる。

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