閉じる

2004年11月23日、東京大手町のKDDIホールで、薬害オンブズパースン会議・TIP「正しい治療と薬の情報」誌共催で、セミナー「暴走するクスリ 今、抗うつ剤で何が起きているのか?」が開催されました。お招きしたのは、英国でSSRIの問題を追及した市民団体のソーシャルオーディットの代表であり、“Medicines out of control(暴走するクスリ)”の著者でもあるチャールズ・メダワーさんです。
 英国では、2002年10月に、公共放送BBCテレビのニュース特集番組「パノラ
マ」が、SSRI(商品名「パロキセチン」)による「自殺企図」などの害反応の問題を取り上げて社会問題化しましたが、メダワーさんは、BBCに患者から直接寄せられた膨大な数の症例を分析し、政府に医師を通じて報告された副作用報告と比較分析して、結果を論文にし、ランセットという権威ある医学雑誌で高い評価を受けるなど、SSRIの問題の追及の先頭に立って活動をされています。
 セミナーでは、まず、SSRIを飲んで自殺を企図し、あるいは攻撃的になった患者やその家族の衝撃的な証言が数多く紹介された「パノラマ」の一部が放映され、次に、パワーポイントを使ったメダワーさんの講演が約1時間にわたって行われました。 メダワーさんの人柄そのままに、真摯で暖かくユーモアのある語り口で語られた講演は、SSRIの問題はもとより、薬害の原因やその防止策等にも及び、洞察に満ちたその内容は、参加者に静かな感動を呼びました。
 そのほんの一部をご紹介します。まず、メダワーさんは、薬というものが極めて社会的な存在で、市民、患者、専門家、企業、政府等相互の関係性の中で検討されなければならないものであるという本質的な指摘をされました。また、SSRIについて何故政府のイエローカードシステム(副作用報告制度)が機能せず、専門家がSSRIによる自殺企図の危険性に長い間気づくことができなかったのかという点に関して、豊かなニュアンスをもって生々しく症状を伝えていた患者家族の報告が、医師の公式の表現に置きかえられた瞬間にいかにその実態から離れてしまったのかを分析されました。そして、SSRIの問題の背景には、類似薬との比較がなく、証明が乏しい臨床試験の問題、新の意味での画期的新薬が乏しい現状の中で、大衆向けの巧妙な直接宣伝によって販売量を上げようとしている企業の戦略、医学の堕落等があると指摘、問題の解決策として、すべての臨床試験の公的登録システムや、情報開示、患者からの副作用報告制度等の提案がなされました。
 講演後は、会場との大変活発な意見交換が行われ、予定を40分以上オーバーして、セミナーは終了しました。このセミナーの詳細については、別途報告書を作成する予定です。これからの薬害オンブズパースン活動について、多くのヒントをいただいた有意義なセミナーでした。 

閉じる