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1.不幸にも薬害が発生したら、「当事者」である医療者のあるべき態度は、患者とともに歩むこと
ライオデュラによるCJD、フィブリノゲンによるC型肝炎は、いずれも使用から20年以上経過し、被害者(使用患者)の特定は困難を極めている。使用実績のある少なくない医療機関が、問い合わせには応じるが患者に事実を伝えサポートしようという姿勢はない。学会の対応方針がそうなのである。患者を守る視点ではなく、「加害者」としての責任追及を恐れての「自己防衛」的態度と言える。対応にかかる手間・人件費や医療費など補償の問題もあろう。しかし当時も最善を尽くしていたはずである。今できることは被害者の救済に最善を尽くすことであり、事実を共有しできることを一緒に考えて進めることである。そして真の加害者の責任を明確にして対処させていくことであり、あらたな薬害防止に全力を尽くすことである。
人権に関わる倫理問題として組織的に位置づけることなしには実現しない。薬害根絶を希求する医療者が、市民の動きとも連動し、自ら従事する医療機関内部でのねばり強い論議を通して、その変革に力を尽くすことである。

2.患者が自己決定(治療薬の選択)できるための条件
〜患者と医師の関係を変える薬害オンブズパースン会議の役割
17年間、病院で薬事委員会に関わってきた。薬事委員会は、個々の医療機関が現状でできる、薬害に加担しないための最初で最大の砦としてのしくみである。患者自身が選ぶことができない医療用薬を安全性・有効性・経済性の視点から選択し、安全に使用するための基準をつくり徹底する。危険性を見破れず採用してしまった失敗もある。数々の失敗をしながらも安全性にこだわってきた。脳代謝改善剤、ハルシオン、ベロテック、トリルダン等を採用中止にする中で、「この薬じゃなきゃ」という患者を説得できない医師のジレンマ、いっそ販売中止になってくれれば患者も諦める、そんな声をたくさん聞いた。患者を大切に思う良心的な医師らの多くが、厚労省や学会の動き待ちである。有効という情報は受け入れやすいが、危険情報はあっても即中止には踏み切れない。厚労省の「正式な」通達があれば考えるという受け身の姿勢を変えられないのも現状である。
製薬企業も学会も、「患者に不安を与えないため」という名目で危険に関する情報をオブラートに包み「安全だから心配ない」を強調する。患者が治療法を自己決定できるための情報はそこにはない。すべてが「医師に従いなさい」である。薬害オンブズパースン会議は、市民の立場から薬害を防ぐため、危険情報を開示させ、患者自身が安全情報・危険情報を知って選択できるような客観的で中立公正な情報として提供している。患者が自分の薬の危険情報を知った上で、「自分はこうしたい」を医師に言えること、医師も「自らの判断」を患者に伝え、協同して最善の治療を進める関係ができれば、薬害を防止する大きな力になると信じている。

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