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 2003年4月4日、薬害オンブズパースン会議は「イレッサ(ゲフィチニブ)の承認取り消し、販売中止を求める要望書」を、厚生労働大臣とアストラゼネカ社にあて、提出しました。要望の趣旨とその理由の詳細については、ホームページに掲載しましたので、ごらんください。要望のポイントは2つです。1つは、イレッサの承認を取り消し、販売を中止すべきであるということ。2つめは、非臨床・臨床試験、および市販後のデータを全面公開して第三者による有効性と安全性の検証を可能にするとともに、厚生労働省とアストラゼネカ社も、それらデータの再検証により有効性・安全性をもう一度見直し、かつ、市販後の副作用被害に対する反省と原因究明をすべきであるということです。
 即時承認取り消しと販売中止を求める理由の中心にあるのは、そもそも、イレッサを承認したこと自体が間違いであったという認識です。承認根拠とされた資料を詳細に分析すると、動物実験段階から肺に対する毒性データが存在した可能性があること、臨床試験では、ヒトに対してどのような使い方をすれば効果的で、副作用が少なく使えるのか明らかになっていなかったこと、また国内例では特に、有害事象や副作用例と判定が甘くイレッサの危険性がかなり低く見積もられていた可能性が高いことなどが明らかになりました。これらのことはアストラゼネカ社による、肺毒性に関する動物実験データ隠蔽や、有害事象報告のグレード操作可能性等が市販後に指摘されたことからも、より明白になってきました。昨年12月25日、薬害オンブズパースン会議は厚生労働省での「ゲフィチニブ安全性問題検討会」に対し、承認根拠データにおける問題点を指摘し、審査過程見直しを要求する文書を提出しました。しかし検討会において承認根拠データおよび審査過程の見直しは一切おこなわれませんでした。
 厚生労働省もアストラゼネカ社も、今後副作用に十分注意して使う、これからの使用症例データを集積して副作用発現要因の解明をおこなうとしています。しかし、危険因子の解明でまずおこなうべきは過去データでのレトロスペクティブな分析です。現在のまま市販を継続してさらに多くの症例を積み重ねることで、副作用被害も確実に積み重ねられています。イレッサは、そのような多くの癌患者さんの犠牲を出してまで薬として存在すべきものでしょうか?答えはNOです。
 今回の要望書に対して厚生労働省とアストラゼネカ社はどのように考え対処するのか、今後も注目していきます。

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