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 難治性肺癌に有効な分子標的薬、安全な抗癌剤として宣伝され、期待の新薬であったはずのイレッサが、なぜ市販後に副作用問題が大きくクローズアップされる薬となったのでしょうか?その問題の根の詳細については、イレッサ緊急報告をお読みいただくとして、ここでは、臨床試験から承認、市販後にかけて副作用がどのように拡大していったのか、その背景で、製薬会社や厚生労働省はどのような対応をしていたのか、あるいはしていなかったのか、という点をみておきたいと思います。
 イレッサの国内臨床試験は2001年5月、海外臨床試験は8月までに終了し、同月には臨床試験外での投与として国内での提供が開始されました。この段階では未承認薬ですので、医師の個人輸入という手続きを経て患者に提供されていました。その後2002年1月25に承認申請が行われ、7月5日承認。7月16日には薬価収載を待たずに発売開始となりました。その後、8月30日薬価収載されるまでの間は、薬価未収載薬ですので、イレッサには特定療養費制度が適用されました。つまり保険医療の中でイレッサの薬代だけ自己負担(1錠約9,000円)すれば使えるという制度が適用されました。この間、海外においてはINTACT 1,2という臨床試験結果が公表され(8月20日)、イレッサを肺がんの一次治療に使った場合には延命効果がないということが明らかにされました。このような事実が明らかになる中で、それでもイレッサの薬価収載は決定され(8月21日)ました。その後イレッサは承認からわずか5ヶ月という短期間に19,000人近くの人に使用された結果、副作用による死亡例124人という被害を出しました。
 臨床試験段階から、医療現場・患者からの期待が大きかった、だから早期承認をし、少しでも多くの患者さんがイレッサという新薬の恩恵にあずかれるように配慮もした、というのが製薬会社や厚生労働省の主張です。しかし、医療者や患者が過大な期待を持ったとすればそこには原因があったはず。その確認と反省なしに、広範な使用と副作用の拡大を患者のせいすることは許されないはずです。

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