閉じる

 医薬品添加物の問題はタイアップ仙台から提起された。タイアップ仙台設立の当初、メンバー数人からBHA(ブチルヒドロキシアニソール)の問題を取り上げたいという提案があった。BHAとは食品にも使われている抗酸化剤で、脂溶性ビタミンを含む総合ビタミン剤などに添加されており、環境ホルモン作用が報告されている。それを妊娠中に継続して服用した母親から生まれた子供に、注意欠陥多動性障害(ADHD)、停留精巣が発生したという話であった。その総合ビタミン剤のメーカーの回答から計算したBHAの1日摂取量は、一般的な食事から摂取する量の127倍であった。この症例は母親の協力もあって論文となった。
 次いで小野寺信一代表が、BHA、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、防腐・防カビ剤のDHA―Na(デヒドロ酢酸ナトリウム)の添加実態について、総合ビタミン剤を作っている主要メーカー12社へ問い合わせをした。なお実験動物の胎児に、BHTは単眼症を、DHA―Naは、骨格異常を起こすことが報告されている。回答から計算すると、通常の服用量の範囲でBHA、BHT、DHA―Naの摂取量は、ADI(一日許容摂取量)には達しないものの、食品からの摂取量よりはるかに多い量を摂取することになるものがあり、しかも製薬企業によって添加量に大きな差があることが分かった。
この段階で、薬害オンブズパースン会議内に医薬品添加物について検討する班を、薬学の専門家、弁護士が加わって作られた。調査結果は最近、論文にし、要望書も出すことになっている。
 上記の症例報告1例では、BHAと胎児の障害とに因果関係があると言うには根拠が弱いと思っていたところ、生協を通じて入手したBHAに関するFAO/WHO合同食品添加物専門家委員会の報告書の中に、半ば無視されたような一つの論文を見つけた。驚いたことに、BHA、BHTを妊娠マウスに与えると生まれた子供マウスに行動異常が生じるというものであった。そこに表現されている子供マウスの障害はヒトの子供のADHDや学習障害に近いものであった。
 総合ビタミン剤は食欲不振が適応になっており、つわり症状を持つ妊婦が服用することが多い医薬品である。摂取量がADI以下であっても、それは胎児への安全性を保証するものではない。今後、消費者団体とも連携して、調査を続けていきたいと考えている。

閉じる