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 平成12年1月26日、かねてから機関紙でご報告していた脳循環・代謝改善剤に関する住民訴訟のうち、東京地裁に提訴していた分の判決がありました。内容は、訴えをいずれも却下するというものでした。「却下」とは、請求の内容に理由がないとされる「棄却」と異なり、内容以前の手続面を理由に訴えを退けるものです。
 判決の論理は[1]違法かどうかの判断に当たっては、作為義務の内容、発生時期、履行難易度など考慮が必要で、そのためにも対象となる不当利得返還請求権の個別具体的な特定が必要である、[2]一部給付内容を明らかにした部分についても、前記3製薬企業からどの卸売業者にいつ販売され、いつ前記3医療機関に販売されたものであるかという薬剤の流通経路が不明であり、前記3製薬企業の不当利得の額をどのように算定すべきあるのか明らかでないので、なお不当利得返還請求権の特定を欠くというべきである、というものです。
 この判決の内容が、およそ一般市民の入手することの出来ない情報を求める、不当極まりないものであることは明らかです。弁護団としては直ちに控訴し、東京高等裁判所に控訴致しました。

用語説明
脳循環・代謝改善剤:脳の循環や代謝を改善する薬理作用を持つとされ、脳梗塞や脳出血に伴う意欲低下、情緒障害を適応症とする。痴呆に対する有効な治療法がないことから、開業医も含め医療現場で広く使われてきた。

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