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 二年前、厚生省は脳循環・代謝改善剤の一部について再評価の結果、その成分の有効性が確認できないとして承認を取消したが、これは薬をめぐる問題を私たちにも分かりやすく示すものであった。厚生省は、承認時においては有効性があったのだというが、それは誠に疑わしい。責任問題を回避するための言い逃れであろう。それにしても、第一次の承認取消し処分を受けた4成分だけで、承認後10年程の売上総額は8750億円にのぼるといわれた。これだけでも大いなる無駄というべきであるが、その後、他の31成分についても再評価指定という異例の措置がとられた結果、そのほとんどが「効かない薬」であることが明かになった。
 どうしてこのようなことが起るのか。問題は非科学的な臨床試験(治験)にあるということであった。「全般的改善度」なる評価項目が巧妙に使われて、効かないものでも恰も効くかのように仕立て上げられる、そのカラクリを教えられて驚くと同時に薬害を生み出す構造問題の一端にふれる思いであった。このようなことを許してはならない。個別の薬剤の問題をはじめ、具体的な事例を一つ一つ引き出し、根気よく潰していくことが必要なのだろう。私たちの活動はその意味でまだ緒についたばかりの段階ではあるが、しかし、間違いなく世の中に一石を投じつつあるように思う。
 さて、私は薬の問題は「消費者」の問題であると考えている。その安全性、有効性、経済性(価格など)や医療・保険などの制度問題を含めて消費者にさまざまな関わりをもつものである。しかし、これまで日本の消費者運動はこの問題に十分対処してきたとはいえない。高度な専門性が求められること、医療との関わりがあることなど理由がないわけではないが、この分野にもつぎつぎと新しい問題が生まれていて、それらは消費者団体がもっと積極的に関わることを求めているように思われる。例えば、医薬品販売の規制緩和や新薬の治験者の広告による募集など、消費者の立場からも検討し、発言すべき課題であろう。薬の問題を、安全・情報開示・被害の救済など「消費者の権利」に直接関わる問題としてとらえ、対処していくことが必要ではないか。
 消費者団体との接点を広げていくことは、私たちの当面の課題の一つである。

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