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「『オンブレス吸入用カプセル』(ウルトラLABA)に関する質問書」を提出 / 回答書受領

2013-01-31

薬害オンブズパースン会議は2013年1月31日、ノバルティスファーマ株式会社及び医薬品医療機器総合機構に対し、「『オンブレス吸入用カプセル』(ウルトラLABA)に関する質問書」を提出しました。

1 オンブレス吸入用カプセルとは
 オンブレス吸入用カプセル(一般名:インダカテロールマレイン酸塩吸入用カプセル)はLABA(長時間作用性β2刺激薬)の一種であり、日本では2011年9月から販売され、現在慢性閉塞性肺疾患(COPD)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解を適応症として使用されている吸入用気管支拡張剤です。従来の長時間作用型β2刺激薬が1日2回の吸入を必要としたのに対し、本剤は1日1回の吸入により24時間作用が持続することを特徴としており、ウルトラLABAと呼ばれています。

2 気管支拡張剤β2刺激剤のリスク
気管支拡張剤であるβ2刺激剤は、薬理学的に喘息関連死及び心血管系リスクが存在することが指摘され、当会議においても、過去に、β2刺激剤であるベロテックエロゾル及びセレタイドについて、検討を行って要望書を提出したことがあります。
オンブレス吸入用カプセルの米国における本剤(商品名:ARCAPTA NEOHALER)の添付文書においては、喘息関連死リスクの増大につき黒枠で警告がなされていますが、日本における本剤の添付文書においては、「重要な基本的注意」欄に気管支喘息治療目的の薬剤ではないことの言及がなされているものの、明確な喘息関連死への言及はなされていません。

3 質問の背景
当会議は、β2刺激剤には喘息関連死及び心血管系リスクが存在すること、オンブレス吸入用カプセルの承認時において、当該リスクについて製造販売後調査において検討する必要がある旨の指摘がなされたことから、同剤の市販直後調査の内容及びその結果を検討する必要があると考えています。

4 質問の趣旨
そこで、当会議は、ノバルティスファーマ株式会社及び医薬品医療機器総合機構に対し、以下の点につき回答を求めました。

(1)ノバルティスファーマ株式会社に対して
ア オンブレス吸入用カプセルの市販直後調査に関し、企業への報告は重篤な副作用発生時とされているものの、推定患者数約8,300人に対し報告された副作用症例数が27例38件と少ない理由をどのように説明されますか。また、具体的にどのような調査を実施したのですか。
イ オンブレス吸入用カプセルの長期特定使用成績調査に関し、調査の具体的プロトコール及び実施状況はどのようなものですか。
ウ オンブレス吸入用カプセルの審査報告書中の「2)低用量での有効性について」(審査報告書49頁、50頁、51頁)における黒塗り箇所に関し、マスキングを行った理由は何ですか。

(2) 医薬品医療機器総合機構に対して
ア ノバルティスファーマ株式会社の行った市販直後調査に関し、貴機構は、同社に対し、いかなる実施上の指導や調査内容に関する聴取等を行っていますか。
イ ノバルティスファーマ株式会社の行った長期特定使用成績調査に関し、貴機構が把握する実施状況はいかなるものですか。また、貴機構からいかなる指導を行っていますか。
ウ オンブレス吸入用カプセルの用量設定に関し、喘息関連死等のリスクについて、貴機構はどのように評価しましたか。また、米国において低用量を承認した根拠につきいかなる評価を行いましたか。更に、長期的試験による有効性・安全性の評価を行う必要性の有無につきどのように判断していますか。

<ノバルティスファーマからの回答書受領>
 当会議の質問書に対し、2013年3月7日付でノバルティスファーマ株式会社から回答書が届きました。
 なお、医薬品医療機器総合機構からは回答書は届いていません。

 当会議は、この回答を受け、市販直後調査、長期特定使用成績調査を含む副作用報告制度の現状及び今後のあり方を更に検討しています。

1 回答書の主な内容
(1)市販直後調査の実施内容と副作用症例数が少ない理由(上記4(1)アについて)
ア まず、市販直後調査実施計画書の抜粋による調査方法の紹介がなされ、その上で、市販直後調査実施状況は、98%以上であったとされています(実施予定医療機関数:病院500、診療所1000)。そして、推定患者数(約8300人)の算出方法は、本剤を発売した2011年9月から市販直後調査が終了した2012年3月までの販売数量(ノバルティスファーマから医薬品卸売業者への出荷数量)を元に、市販直後調査期間中の平均的な治療期間を90日と仮定して算出したとしています。
(推定患者数=751,268カプセル(1カプセル×1回×90日/人)≒8300人)
なお、この計算上、市場在庫及び医療機関内での在庫は考慮されていません。
イ その上で、報告された副作用症例が少ない理由は、市販直後調査における副作用の収集は、医療関係者の自発報告に基づくものであって、契約に基づく特別な調査・研究等を実施して副作用症例を網羅的に収集することを意図したものではないからであると述べ、厳格な基準のもとで実施される臨床試験より報告頻度が少ないとしています。

(2)長期特定使用成績調査のプロトコールと実施状況(上記4(1)イについて)
ア 特定使用成績調査実施要領が添付資料とされており、本調査は、登録期間2012年4月1日〜2014年3月31日、調査期間2012年4月1日〜2015年3月31日、観察期間は投与開始から52週とし、投与開始後12週及び52週に調査票を記入して送信する方法により行うこととされています。また、重点調査項目は、/慣豐彪六象及び脳血管系事象等が発現した場合、咳嗽が発現した場合には、その詳細情報の収集に努め、得られた情報を有害事象欄に入力するとされています。
イ 2012年11月30日現在の登録実施状況は、契約施設が333施設であり、157施設から485例が登録されています。12週の調査票を回収したのは、13施設29例であり、そのうち28例を解析対象例として集計したところ、副作用発現例は0例であったとしています。

(3)審査報告書中の黒塗り箇所について(上記4(1)ウについて)
  審査報告書中の「2)低用量での有効性について」(審査報告書49頁、50頁、51頁)における黒塗り箇所は、審査中のFDAの意見の詳細が記載されているとしています。
  そして、その理由としては、審査報告書作成時点では、米国では承認されていなかったため、未承認下のFDAの意見は、「公にすることにより、当該法人等または当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」(行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条第2号イ)に該当すると判断したため、としています。
  なお、回答書においては、黒塗り箇所は現段階では公表可能とのことで、開示されました(下線部)。
 <審査報告書49頁29行目から36行目>
  「申請者は、FDAより、本剤の臨床試験成績から、75㎍と150㎍以上の用量の間に臨床的に意味のある有効性の差が認めていないとの指摘を受け、LABAは全般に治療域の狭い製剤であり、慎重かつ正確に用量を設定する必要があるため、COPD患者と比べてβ2刺激薬に対する気管支の反応性が高いと考えられる気管支喘息患者を対象とした低用量側での用量反応試験(B2357試験)の実施を求められたことを説明した上で、FDAの指摘に従いB2357試験を実施するとともに、ノバルティス社の判断によりCOPD患者を対象とした低用量側での用量反応試験(B2356試験)及びCOPD患者を対象とした75㎍のプラセボ対照比較試験(B2354及びB2355試験)についても併せて実施し、当該追加臨床試験において以下のような成績が得られたことを説明した。」
 <審査報告書50頁下から2行目から51頁1行目>
  「一方、75㎍はある程度有効性を示し、150㎍は呼吸機能及びTDIの改善効果の点で追加のベネフィットを示したことから、最低臨床有効量を求めるFDAの要求に従い、米国では75㎍及び150㎍の2用量を申請した旨を説明した。
<審査報告書51頁2行目から6行目>
  「さらに申請者は、本剤75㎍及び150㎍(1日1回)を米国で申請したことは最低臨床有効量を求めるFDAとのこれまでの議論を反映したものであり、追加臨床試験の結果を踏まえても、150㎍及び300㎍の効果は呼吸機能のみならず臨床症状においても75㎍を上回ると考えられること、また安全性上の懸念もみられないことから、150㎍及び300㎍(1日1回)がCOPD治療においてリスクを上回るベネフィットを有するという申請者の見解に変化はないことを説明した。」

2 回答書の問題点
(1) 市販直後調査については、その実施方法において、出荷数量には問屋在庫や医療機関在庫が相当数予想されるにもかかわらず、これを前提に推定患者数を算出しており、推計患者数は現状から乖離していると思われます。調査依頼医療機関数を前提に推計したり、調査依頼医療機関から使用患者数の情報提供を受ける等、現状に近い算出方法があり得るはずです。また、現状のような自発報告の状況では、市販直後調査の目的とする重篤な副作用や有害事象を収集するシステムとして十分に機能していないと評価せざるを得ません。

(2) 長期特定使用成績調査については、添付された実施要綱を見ると、重点調査項目は、調査項目の項の最後に記載されており、その重要性が軽視されかねない設定となっています。また、総合評価もきわめて曖昧な基準であり、この調査結果が再審査のための資料となりうるのか疑問です。また、現段階で1500例という目標値に対し、未だ登録数が157施設485例であり、さらに12週の調査結果収集数は13施設29例に過ぎません。現在までの経過からして、1500例の目標に達することができるのか、非常に疑問です。

(3) マスキングの理由についても、なぜ非開示理由に該当するのか、その回答は不十分ですが、少なくとも企業に不都合な議論が非開示とされていることがうかがわれます。

以上