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 医療はまぎれもなく公共政策である。そしてその中身は医師を中心とした専門家と医療産業と厚生省がつくってきた。そこに患者、市民は不在だ。どのように決められたのかについての情報公開も乏しい。企業は販売には熱心だが危害情報等自社に不利益な情報は隠したがる。厚生省には患者の生命・健康を守る視点からのチェック能力はない。臨床医は企業や厚生省に依存し、批判体質をもたない。それどころか厚生省・企業・専門家は互いに依存しあい、ベットリとした癒着構造が横たわっている。
 その中で医療被害が構造的に生み出されている。とくに薬の分野が著しい。ペニシリンショック、サリドマイド、クロロキン、キノホルム、血液製剤、ソリブジン、乾燥硬膜等々野放しにされた危険な医薬品が大量の健康・生命侵害をくりかえしてきた。
 一方で制度的改革を展望・推進しながら、他方で個々の具体的危険薬について警告を発する民間監視機構が必要だ。
 東京HIV訴訟全国弁護団連絡会と全国市民オンブズマン連絡会議の発案で設立されたのがこの組織だ。本業をもちながらのボランティア活動でどれほどのことができるかの心配もあるが、広く患者・市民に情報を提供しつづけることで風は嵐となり、癒着構造を破壊してゆくことができると考えている。
 20名のオンブズパースンの会議の外側に医師・薬剤師等の協力的な専門家ボランティアも増えてきた。オンブズパースン会議とリンクしたタイアップグループの旗揚げ準備も各地で始まった。第1弾として取り上げた喘息薬「ベロテックエロゾル」(日本ベーリンガーインゲルハイム)の警告活動をとおして、我々の政府・厚生省が実に頼りにならない役所であることがわかってきた。数ある薬の危害情報が集まってきても、手がまわらなくて対応できないようだ。政府が薬の危機管理について口先だけで本腰をいらないなら、自分の生命は自分で守るしかないとの実感だ。背筋が寒くなる状況を知った以上やるしかない。

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