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こちらは1年以上も返事を待っているのにずっと知らんぷり。国立大学の研究者として決して許されない不誠実さです。

 発端は2023年1月のこと。当会議は「『HPVワクチンの有効性と安全性の評価のための大規模疫学研究』(NIIGATA study)に関する新潟大学広報記事の誤認の訂正及びその原因検証実施の要望書」を当該研究者と新潟大学学長宛に送りました。

 2022年9月に同大学が公表した「HPVワクチンによる子宮頸部前がん病変予防効果を確認-NIIGATA study:初交前接種でより高い予防効果-」と題するプレスリリースの内容が不適切だったからです。元の論文には「接種者全体では非接種者との間で中等度以上の前がん病変(HSIL+)の発生率に統計的有意差が得られなかった」、つまりHPVワクチンの有効性を統計的に証明できなかった、と記載されているのに、プレスリリースでは 「予防効果を確認」という誤った見出しになっていました。そのため、それをもとに書かれた時事通信社とメディカルトリビューン社の記事は、「予防効果を確認」という、誤った内容になっていました。要望書では、プレスリリースの訂正と、なぜこんなことが起きたのかについての調査を求めました。

 当会議では当初1か月以内の回答を求めていましたが、まったく音沙汰なし。

 事態が動いたのは約4ヶ月後のこと。2023年5月に問題のプレスリリースが突如「本研究成果にかかる記事は,内容の正誤や適切性を調査中のため,閲覧を一時中止しています。」という記述に変わり、「閲覧一時中止」となったのです。おそらく新聞社からの取材が入ったことがきっかけのようです。

 それでも沈黙を続ける当該研究者らはどう思っているのか。そう考えていたら、あるオンライン講演会で、筆頭著者にチャットで質問する機会を得ました。「先生たちの論文ではワクチン接種の予防効果が統計的に証明できなかったのではないですか?」と質問したら、その答えに驚かされました。自分たちは、初交前に接種した人の有効性を証明できるよう研究参加者数を設定していたので、「接種者全体では、研究参加者数が不足していたため正確なところは言えない、という状況となっております」と答えたのです。

 これはいかにもおかしな説明です。確かに彼らの研究では、初交前に接種した人に限った解析ではぎりぎり有意差が出ていましたが、それが主目的であって、接種者全体での効果は別に証明できなくてもいい、とでもいうのでしょうか。

 現実に、いま行われているHPVワクチンの定期接種は、「あなたは初交前ですか」と聞いて「はい」と答えた人にだけ接種されているのではありません。小学6年から高校1年相当の女子に一律に接種されているのです。どう考えても、接種者全体の有効性のほうが国民にとって重要な情報でしょう。

 とにかく新潟大学のウェブサイトは2024年2月現在も「閲覧一時中止」のまま。つまり新潟大学の研究者らによる不誠実な対応により、多額の税金を使って行われた研究の成果が一年以上も国民に広く伝えられていないことになります。一方で、テレビCMなどが活発に行われ、多数の少女たちがHPVワクチンを接種しているのです。

 一刻も早く、事実に基づいた正しい発表をすることが、新潟大学の研究者らには求められています。

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