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 日本は自動車や電気製品では世界のトップレベルなのに、薬はどうして違うのかと外国人からよく聞かれる。他産業が世界市場を相手にし、外国企業が模範とするほど品質管理を徹底したが、薬は粗悪品でも国内市場で通用するように仕組まれてきたからだ、と答えると納得してくれる。
 少量のアスピリンは狭心症の人の心筋梗塞を少なくすることができ、1週間で 200円余りなのに、同じ効果は確かめられていない新薬が1カ月2万円以上。眠気が少ないくゃみ鼻水の薬トリルダンは、不整脈で死亡の危険があり、効く証拠はないのに気管支喘息に使用が認められ、イギリスの薬価の11倍。日本は新薬に薬剤費の半分を使っているが、新薬の使い方をドイツ並みにすれば3.5 兆円、イギリス並みで6兆円の節約になる。
 心臓に優しいと医師の誰もが信じていた喘息薬ベロテックは調べてみると心毒性が一番強い危険な物であることがTIP/JIPの調査で解明された。H2ブロッカーが一般市販されたが、医師が使っても使い方を誤れば危険な薬だ。こんな薬は市販薬には不適切。
 効かない、有害なものを排除し、本当に効くものに医療費は使うようにすれば、医療費の無駄が大幅に省けるし薬害も防止できる。
 医薬品・治療研究会(TIP誌)は12年前から、製薬企業からの援助抜きで医薬専門家向けの情報提供を手がけてきた。その医薬品・治療研究会のこれまでの実績の上に医薬ビジランスセンターJIPが1年前から日本の医薬品の評価専門研究機関として独立。活動を開始した。医薬品・治療研究会とともに薬害オンブズパースンを研究面で支える専門家機関だ。薬の監視には調査・研究が必須である。TIP/JIPは薬害オンブズパースン活動のこの面を支えている。
 しかし、それだけでは世の中変わらない。行政を動かし、製薬メーカーの販売、宣伝姿勢を変え、そして何よりも医師の処方パターンが変わり、処方された人の薬に対する考え方、飲み方が変わらなければ薬害は無くならないし、医療費の無駄は無くならない。
 薬害オンブズパースンは、その一歩を踏み出したばかりで、監視すべきものが多く、思いがけない反論などもあり、苦労の連続だ。しかし、一歩一歩成果が出てきている。
 医学はこれまでの常識が次々に塗り替えられている。医師はもちろん市民や患者さんも、確かな情報探しを真剣に考えて欲しい。

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