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 ネットの世界では「やってみた系」というジャンルがあって、◯◯を踊ってみたとか、◯◯を作ってみたとか、素人がいろんなことを試してみる他愛のない動画が人気を博しているそうです。

 それにあやかろうというわけではないでしょうが、2020年9月に大阪大学上田豊講師らのグループが発表した研究は、まさに「計算やってみた」という内容でした。

 ところが、それをいくつかの新聞社と通信社が鵜呑みにして報じたため、世の中に誤ったメッセージが伝わるおそれが生じました。記事の一例は、日経新聞の「勧奨中止で死亡4000人増か 子宮頸がん予防ワクチン」というもの。HPVワクチンの積極的勧奨の中止によって、公費接種の機会を逸した00年から03年度生まれの女性の4000人が狆来、子宮頸がんで死亡することが確定した瓩箸いκ騒なお話です。記事に指摘されている女性たちはいま17歳から20歳くらい。彼女たちがなぜ将来子宮頸がんで死ぬと決めつけられなければならないのか? 普通に考えればおかしな話です。

 それもそのはず、大阪大学の研究は、次のようなありえない前提を置いて「計算をしてみた」ら、接種率が高かった世代の女性に比べて「子宮頸がんが増えるはず」というものだったのです。

 その前提とは、.錺チンを接種した人は16型/18型HPVによる子宮頸がんが一生涯予防され、他の発がん型HPVによる子宮頸がんにもならない、将来にわたって日本の子宮頸がん検診の受診率は変わらず、せ匍樶瑤んの治療成績も変わらない、等々。確かにこの前提がすべて成り立つなら、接種率が70%を超えていた世代に比べて、彼女たちには子宮頸がんが増え、死者も同じ割合で増える計算にはなりますが、現実にはそんなことは起こりえません。

 当会議では、彼らの都合のいい前提 一 つ 一 つに対して、データをもとに反論した文章をブログで公開、そのブログを読んでくださいと報道各社に手紙を送りました。

 うち6社からは今後も適切な報道をします、と丁寧な返信が。うち1社からは「いやあ、英文誌掲載に引っ張られまして…」という言い訳めいた電話ももらいました。

 この研究の著者らにはHPVワクチンメーカーとの利益相反がありました。そんなことも「計算やってみた」理由なのでしょう。大学の研究にも気をつけないといけません。

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