閉じる

1 意見書提出と衆参両院の厚生労働委員会参考人

 新型コロナウイルスのワクチンの開発が異例のスピードで進み、厚生労働省は、全国民に提供できる数量の確保を目指すとし、承認前から、海外企業3社と供給に関する基本合意をしています。

 当会議は、2020年10月6日、厚生労働省に対し、「新型コロナウイルス感染症(COVID−19)のワクチンに関する意見書」を提出しました。また、同ワクチンの導入を念頭においた予防接種法の一部改正について、当会議メンバーが衆参の厚生労働委員会で、参考人として意見を述べました。

2 ワクチンについての基本的考え方

 まず、意見書で指摘したのは、ワクチンの導入は、政治的な目標によってではなく、科学的な評価を基礎に行われるべきであるということです。

 健康な人に接種するワクチンは、治療薬よりも高い安全性と有効性が必要です。この点、新型コロナウイルスは、変異しやすく、再感染報告があることなどから、ワクチンの有効性は限定的である可能性が指摘されています。また、政府が基本合意をしたワクチンはいずれも、ウイルスの遺伝子情報を接種する新しいタイプのワクチンであり、新しい副作用が生まれる可能性もあります。承認前に十分に安全性と有効性が検証される必要があります。

 3 特例承認を適用するべきではない

 免疫には人種差があります。従って、日本人の第三相試験は不可欠であり、特例承認(緊急の必要がある場合に、外国で承認されている医薬品を国内での治験を行わずに承認する制度)のワクチンへの適用は認めるべきではありません。ましてや、海外において緊急使用制度のもとで使用が認められたに過ぎないワクチンを特例承認することなど許されません。

4 接種義務は認めるべきではない

 ワクチンについて国民に接種を勧奨し、努力義務を課すには、より一層高い安全性と有効性が求められます。

 しかし、新型コロナウイルス感染症は、それ自体未解明の点が多く、ワクチンについても、未知の部分が残ることが避けられません。また、異例のスピードによる開発と承認が、ワクチンの有効性や安全性に影響を与える懸念もあります。したがって、接種の努力義務を課すべきではありません。

 ところが、予防接種法の一部改正によって、接種の努力義務を課す規定が設けられました。これは適切ではありません。

5 自己決定権

 十分な情報に基づいて自己決定ができるようにする必要があります。しかし、ひとたびワクチンが承認されれば、過剰な期待から、接種を控えるという選択を許さない風潮や差別を生むことが懸念されます。自己決定権の尊重については特段の配慮と対応が必要です。

閉じる