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 薬害オンブズパースン会議は、2020年6月21日に、MSD社が承認申請中の9価HPVワクチン「シルガード9」の承認に反対するパブリックコメントを国に提出しました。

 日本では、これまでにグラクソ・スミスクライン社の2価HPVワクチン「サーバリックス」とMSD社の4価HPVワクチン「ガーダシル」がそれぞれ承認されています。この2つのHPVワクチンは、国が2010年から実施した緊急促進事業により接種者が急増したところ、激しい疼痛や不随意運動、さらには自律神経障害、認知・学習機能障害といった深刻な副反応被害を訴える女性が相次ぎ、2013年に定期接種化された直後に積極的な接種勧奨は中止されて現在に至ります。同様の被害が海外でも生じていることは、2018年に当会議が開催した国際シンポジウムにおいて各国の被害家族からも報告されているとおりです。

 こうした中、MSD社は、海外で「ガーダシル9」として販売してきた9価HPVワクチンの承認を5年前に申請し、日本では「シルガード9」との名称での販売を計画しています。ガーダシルと基本的に同一の成分と設計によるワクチンですので、同様の危険性が想定されるはずですが、国は、シルガード9の審議を薬食審医薬品第二部会においてWeb会議と電子メールを用いた所属委員のみでの持ち回りという形式で行うことを、新型コロナ問題で緊急事態宣言を発令中の本年4月15日に、突如発表しました。HPVワクチン薬害訴訟全国原告団・弁護団は、かかる方式での審議の中止と公開検討会の開催等を求める意見書を直ちに公表して抗議しましたが、国は審議を強行し、承認を可とする意見がとりまとめられました。

 今回のパブリックコメントは、シルガード9の承認に向けて国が生物製剤基準の改正等を行うことについてのものでしたが、当会議は、シルガード9の承認自体が許されず、その承認を前提とした生物製剤基準の改正等も行うべきではないとする意見を提出しました。報道によれば、多数の意見が提出されたとのことで、同時期に承認が可とされた他の薬剤が6月29日に承認される中で、シルガード9だけが承認を見送られるという異例の展開となりました。

 新型コロナ問題の渦中であれば反対運動の展開に支障を生じることを見越したかのように、5年間棚上げしてきたシルガード9の承認を急ぐ国の姿勢は、あまりに姑息です。正々堂々と議論を尽くすことのできないワクチンの承認が許されてはなりません。

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