閉じる

 薬害肝炎訴訟は、C型肝炎ウイルスに汚染された血漿分画製剤によってC型肝炎に罹患した被害者が2002年に提訴して開始された裁判です。被害者は、慢性肝炎や肝硬変・肝がんへと進展する病状に苦しみながらも、東京・大阪・福岡・名古屋・仙台の5地域で進められた裁判を必死に闘い抜きました。

 その裁判の成果として、2008年1月に国との間で締結された基本合意書には、第三者機関による薬害肝炎問題の検証を行うことが明記され、国が薬害再発防止に最善・最大の努力を行うことが誓約されました。この合意によって裁判は終わりましたが、原告団は薬害再発防止に向けた新たな闘いのスタートを切りました。

 2010年4月、薬害肝炎事件検証・再発防止委員会の最終提言がとりまとめられました。提言の中では、厚労省から独立した立場にある監視組織を設置し、薬害の発生及び拡大を未然に防止するため、医薬品行政機関とその活動に対して監視及び評価を行うことが明記されています。しかしその後、監視組織創設に向けた動きは遅々として進みません。毎年の協議の場で、のらりくらりと実行を渋る歴代の厚労大臣や官僚の言い訳を聞かされながらも、薬害肝炎の被害者たちは、粘り強く提言の実行を迫り、社会に対しても監視組織創設の重要性を訴え続けました。

 私自身も弁護団の一員としてその活動を見守ってきましたが、今なおC型肝炎の治療や経過観察を続けている立場の被害者が、時に希望を失いそうになりながらも、熱心に議論を闘わせ、心を一つにして活動を継続していく姿を見て、薬害が二度と起きて欲しくないという被害者の願いがどれほど切実なものであるのかということを、その都度教えられてきたように感じています。

 2019年11月27日に改正薬機法が成立し、ついに「医薬品等行政評価・監視委員会」の設置が決まりました。基本合意から10年以上にわたる被害者らの闘いが結実する瞬間を迎えたのです。

 しかし、被害者の闘いはまだ終わりません。厚労省内に設置されることとなった委員会が本当に第三者性を持ちうるのか。本当に薬害防止のために力を発揮できる組織となるのか。すでに原告団は次の課題に向けた活動を開始しています。

 残念ながら、今回の薬機法改正によって条件付早期承認制度が法制化されるなど、医薬品の安全性確保を軽視する動きが加速しています。実際に設置される評価・監視委員会が、経済性を優先して安全性に目をつぶるような行政の姿勢を適切に監視できる組織となることこそ、すべての薬害被害者に共通する願いであるはずです。

 闘い続ける薬害肝炎原告の背中を見ながら学んだことを大切にしながら、私自身も、薬害オンブズパースン会議の活動を通じて薬害の再発防止を本当に実現できるように、更なる努力を尽くしていきたいと思います。

閉じる