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 放送法第4条には、「報道は事実を曲げないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」等の番組編集の基準が具体的に示されている。大本営発表をそのまま流していた戦前・戦中の放送への反省から、「正しい情報」を「公平・中立」な立場から伝えることを、放送の倫理規範として強く求めているのである。

 ところが2019年5月27日のNHK「おはよう日本」の特集『はしか ワクチン拒否の実態』は、明らかにこれらの基準に反する内容だった。

 特に‘本におけるはしかの流行の原因のひとつが、あたかもワクチン拒否運動であるかのような「事実を曲げた報道」、■咤裡咾覆匹波信されている「ワクチンの危険性を訴える情報」のほとんどが「誤った情報」であると決めつける「公平・中立」でない伝え方が問題だった。

 そこで当会議では2019年11月1日、NHKの上田会長宛に意見書を送り、いまもNHKウェブサイト上にある番組ダイジェスト版の削除と、今後は放送倫理を遵守した報道を行うよう求めた。

 詳細は意見書を読んでいただきたいが、とにかく日本では、ワクチン拒否運動の影響によって麻疹ワクチンの接種率が下がるといった現象は起きていない。最新(2018年度)の第1期麻疹ワクチン(1歳児)の接種率は98.5%で、むしろ前年を上回っている。

 また、この番組では、ワクチンの危険性を伝えるSNS情報は誤った情報ばかりだという伝え方をする一方で、過去にワクチン副反応被害により国やメーカーの賠償責任が認められた例や、HPVワクチンのように多くの科学論文で危険性が指摘されている例があることには一切触れていなかった。

 極めつけは、「科学的に正しい情報」を発信していると紹介した日本人医師のウェブサイトの映像には、ワクチンに安定剤として含まれるゼラチンについて「煮凝りですね おいしく食べられる安全なものです」と書かれていた。食べて安全なものなら注射しても大丈夫?それこそとんでもない非科学的説明だ。ワクチンのゼラチンアレルギーは専門医の間では常識で、国はわざわざDPTワクチンからゼラチンを除去させる対策を行っている。

 この取材をした国際部の記者は、NHKの記事データベースを見る限り、これまでワクチンの安全性について取材した経験がほとんどないようだ。最後にスタジオで「副作用の話はどうしても避けられませんが、はしかをはじめとした感染症は、命にかかわるケースもありますから」と述べているが、重要なのは、ワクチンの有効性と安全性のバランスだという医学の常識を知らないか、あるいは軽視していることを図らずも露呈している。受信料で支えられる公共放送なのだから、放送倫理を遵守した放送をすることを強く求めたい。

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