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 2018年5月、HPVワクチンに関するコクラン・システマティック・レビューが公表されました。しかし本レビューは、解析対象試験の網羅性、また分析者の立場の中立性などの観点からみて、本来のコクラン・レビューとしてのあるべき姿からは程遠いものでした。そこで薬害オンブズパースン会議は、6月7日、本レビューに対する批判的見解を公表し、また8月13日にはこの批判的見解の英訳版をコクラン代表と関連各部門(情報伝達部門、資金関連評価部門、当該レビューを管轄するレビュー・グループ)の各責任者に送付しました。さらに、批判的見解内容を骨子とした、本レビューへのフィードバックをコクラン・ライブラリに投稿しました。批判的見解の骨子はつぎのような内容です。

  有効性については、26のランダム化試験(1試験以外は全て企業資金による試験)を評価した結果、子宮頸がんの前がん病変が減少することを確認したとしているが、これまでの臨床試験結果で得られている有効性に関する知見と同様であり、新たな知見といえるものではない。

  危険性に関しては、23試験での有害事象報告数を用い、HPVワクチン接種群は対照群と比較して重篤な有害事象の発現リスク増加は認められず、死亡においても有意な増加は認められなかったとしている。しかし22試験ではアジュバント入りのプラセボまたはアジュバント入りの他のワクチンが対照として用いられ、残り1試験のみ、アジュバントを含まない対照が用いられているものの、この対照もA型肝炎ワクチンであり、生理食塩液プラセボ対照が用いられた試験は23試験中1試験もない。これではアジュバントを含むHPVワクチン製剤としての有害事象を捉えることはできない。また、各試験における個別の有害事象の報告数を用いて分析しているが、これでは長期間にわたって様々な症状が1人の患者に重畳的に発生するというHPVワクチンの特徴的副反応を分析できていない。

  著者の利益相反の観点でみると、4名の執筆者のうち3人に利益相反(HPVワクチン企業から旅費関連費用を受け取り)があり、コクラン・レビューの著者として不適切と考えられる。

 本コクラン・レビューに対しては7月27日、ノルディック・コクラングループによる、問題点を指摘する論文がBMJ–EBM誌に発表され、これを発端として、コクラン執行部を揺るがす問題にも発展しています。本レビューがコクラン・レビュー本来の形に改訂されるとともに、コクラン組織も、創立時の精神に立ち返り本来の姿を取り戻すことを期待したいと思います。

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