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 名古屋市が2015年に実施した「名古屋市子宮頸がん予防接種調査」について、2018年2月、名古屋市立大学鈴木貞夫教授による論文が発表されました。鈴木論文では、「ワクチンと報告されている症状あるいは副反応との間に因果関係はないことが示唆された」との結論が採られており、因果関係を否定する研究結果が示されたなどと言われていますが、これは間違いです。

 当会議は、論文の問題点を指摘する「『名古屋市子宮頸がん予防接種調査』に関する鈴木貞夫論文についての見解」(以下「見解」)を2018年6月11日に公表しました。見解では様々な問題点を指摘していますが、中でも根本的な欠陥は、HPVワクチンの接種後に見られる症状について、ワクチン接種群と非接種群の発症率を比較した結果、24症状中14症状で、接種群の方が非接種群よりも有意に発症率が低いという結果が生じている点にあります。ワクチンと症状との関連がないのなら、接種群と非接種群で発症率に差はないはずですが、接種した方が発症率が減る、つまり健康になるという結果になっているのです。

 解析が適切ならこのような結果は生じないはずですから、これは鈴木論文の解析方法に何らかの問題があることを示しています。原因としては、健康状態が悪い人ほど接種を回避すると考えられるので、もともと非接種群の方が健康状態の悪い人が多いという可能性と、年齢調整が不適切である可能性が考えられ、その両方が作用している可能性もあります。いずれにせよ、このような解析結果で因果関係を判断することはできません。

 鈴木教授は、この見解に反論する回答書を公表し、その中で、上記の結果の原因は「非接種者のほうが、もともと体調や健康状態がよくないこと」に起因すると認めたうえで、「それを大きく超えて悪影響が出るのが薬害であると考えている」としています。

 しかし、この説明は、もともとの健康状態の差を超えない範囲で、ワクチン接種による発症率の差(上昇)が生じている可能性を認めています。鈴木論文は、接種群と非接種群の発症率を比較し、接種群で有意に発症率が高い症状があるかどうかで因果関係を判断しているのですから、発症率上昇の可能性があるのなら、本来は「因果関係はないことが示唆された」という結論を導くことはできません。回答書は、「因果関係の有無」を「薬害かどうか」という問題にすり替えて、見解で指摘した根本的欠陥をごまかそうとしていますが、結果として、名古屋調査の結果では因果関係を否定することはできないことを自認してしまったと言えます。

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