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 医師に質問できますか?

 その答えは「人による」なのかもしれない。が、どの患者も質問でき、支援を受けながら「疾病」に向き合って行ける患者-医師(医療者)関係を実現したいと思う。 

■ コミュニケーションツールとしての医療記録(カルテ)

 医療記録は医療(行為)の法的・倫理的妥当性を証明し、医療費算定の根拠、医療専門職の実績記録、保健医療施策の根拠にもなる。そして健康の主体者である患者と医療専門家との信頼関係を深めるコミュニケーションツールでもある。

 私が勤める病院では、パスワードを使って患者が自分の医療記録(電子カルテ)を見ることができる。紙カルテ時代、受付後から会計に出すまでの間自由にカルテが見られたが、電子カルテでは難しくなった。「見ない」が「普通」になると「見る」が「特別」になる。カルテ開示というと「何かあったのか」と理由を問う医師も少なくない。患者と共有できる記録という意識も薄れてくる。電子カルテ導入から7年後の2011年、患者が自分の電子カルテにだけアクセスできるシステムが実現し、いくつかの「抵抗」はあったがコミュニケーション促進を目的に合意形成を図り運用を開始した。患者は安心感を得、医療者は見られていることを意識するようになった。しかし質問が増えるなどの実感できるようなコミュニケーションの変化は見えて来ない。

■ 質問ができるために

 患者向けに医療記録の読み方講座を開催した。問題指向型医療システム(POS)では、症状はじめ背景となる基礎情報を収集して患者の健康上の問題を特定し、解決するための計画を立てる。計画を実施して、問題に関してのSubjective(S…主訴)、Objective(O…観察事項・データ)の変化を見ながらAssessment(A…評価・判断)に基づきPlan(P…計画)を立てるという問題解決過程が記録される。患者の主訴(S)はとても重要で、伝えたかったことが書かれているかをよく見ること、それと診察所見や検査結果など(O)をもとに何が考えられどう対処するのかがAとPで表現されているか、それらは説明された内容と相違ないか、自分のすべきことが説明されたか(理解できたか)といった読み方を伝える。どう感じたか、わかったかを基準に判断してよいのだと自信を持ってもらい、わからなければ質問してよいのだと伝える。それでも特に医師には質問しづらいようだ。「聞いていいのか? 他の患者さんが待っているし、悪いと思って聞かなかったよ。」という参加者がいた。患者が自律した健康の主体者となるためのサポートは試行錯誤の連続だ。少しずつ変化はしていると信じるのだが…。

■ 最適な医療に向けて

「意思決定支援ツール」には質問リストが多く見られるが、決定後の確認も重要だ。たとえば薬が処方されたら、「症状がとれたら飲まなくてよいのか」「飲み終わったら来なくてよいのか」「再診察が必要なのはどんな時か」などは自分から質問しよう。患者は医療者を変える力を持っているのだから。

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