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 1999年8月24日に厚生労働省敷地内に「薬害根絶誓いの碑」が建立されて以来、「全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)」は、毎年8月24日を「薬害根絶デー」と定めている。この日は全国から被害者が東京に集まり、午前中に文部科学省と、午後からは厚生労働省との交渉を続けており、今年は17回目になった。  薬害の根絶を目指して、長年にわたり、障害を持つ被害者や遺族が暑い中集まって来たが、今夏から新たに「HPVワクチン薬害訴訟全国原告団」が12団体目として薬被連に加盟するなど、薬害は根絶どころか漫然と繰り返されてしまっている。
 特に「子供たちを将来、薬害の被害者にも加害者にもしたくない」という思いで文部科学省との交渉を続けてきたにもかかわらず、HPVワクチンの被害者は、少女たちだ。

 そのような現状の中、過去17回の文部科学省交渉にすべて参加してきた者として、その経過と課題について記しておきたいと思う。

 文部科学省は当初、薬被連の交渉希望に対して、「年に1回のみ、1回30分以内、国会議員の同席必要、テープ録音不可、文書での回答不可」という5つの条件を提示した。
 そうして始まった1回目の交渉では、文部科学省の官僚が「薬害」と「薬物乱用」を混同した回答に終始し、翌年の2回目の交渉は、1回目の薬害の理解不足について官僚らが謝罪をして終わったという状況であった。薬害を繰り返さないために薬害を伝えたい、という思いは、文部科学省の担当官僚がそもそも薬害に関する教育を受けていないために、薬害を全く知らないという壁にまずぶつかったのである。

 2002年3月25日に、クロイツフェルト・ヤコブ病に感染した被害者らと国・被告企業らとの間で和解が成立したが、この間の遅々と進まぬ文部科学省交渉の状況を憂いた被害者たちは、その和解確認書の中に「我が国で医薬品等による悲惨な被害が多発していることを重視し、その発生を防止するため、医学、歯学、薬学、看護学部等の教育の中で過去の事件等を取り上げるなどして医薬品等の安全性に対する関心が高められるよう努めるものとする」等の文面を入れた。しかし、期待された同年8月の4回目の交渉では、その和解確認書自体を文部科学省が把握していなかったことが明らかになり、国が和解確認書を軽んじている、として、国会でも問題になった。そして、翌年の5回目からようやく医学教育課長が出席するなどして、まともな交渉の形となり、2006年の8回目では、文部科学大臣が出席し、大臣が誰に替わろうとも、毎年、大臣が参加し続けるよう申し送る旨の発言がされたのである。   
 
 それ以降、大学の医学部、薬学部、看護学部で、薬害被害者の声を直接聞く特別授業の実施を文部科学省は10年にわたり呼びかけ続けているが、いまだに実施しているところでも単一の薬害のみであるところがほとんどで、特に看護学部では実施自体が進んでいない。また、全国の中学3年生に「薬害を学ぼう」というパンフレットが配布されて5年を過ぎるが、多くの中学校で段ボールが開封されないまま廃棄されていることも確認されている。

 このように、課題が多い文部科学省交渉の結果の記録は、今年の分も含め、薬被連のホームページの「薬害根絶デー」のページで公開している。

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