閉じる

 この原稿を書くに当たり、2010年に自分がこの機関紙に書いた原稿を読み返すと、10ヶ月の息子に当時生ワクチンであったポリオワクチンを接種することへの不安を綴っていた。その後、我が国でも、2012年9月にポリオの不活化ワクチンが導入され、同年11月には4種混合ワクチン(DPTとポリオの混合ワクチン)が導入された。3種混合から4種混合への移行期に接種した人の安全性や、そもそも混合ワクチンの安全性はどうなのだろうか、など心配は尽きないが、長らく懸念の声が高まっていた生ワクチンによるポリオ発症や二次感染の危険性がなくなったことは評価できる。

 当時10か月だった息子もこの春晴れて小学生になったのであるが、就学時健診の時に、就学前に接種すべきワクチンを接種し忘れていないかの確認があった。そこで再度チェックしてみると、息子が生まれたときには接種一時見合わせ(積極的勧奨の差し控え)となっていた日本脳炎ワクチンが、新たなワクチンの開発により積極的勧奨がなされるようになっていた。
 そこで少し調べてみたところ、この6年の間に、定期接種化されたワクチンが多数あり、接種事情もずいぶん様変わりしたようである。当時任意接種だったHibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、水痘(みずぼうそう)ワクチンが定期接種化された。
 
 乳幼児期に定期接種化されているワクチンを真面目に全部接種しようとすると、かなりタイトなスケジュールになる。乳幼児は体調も安定しないため、予定通りに進まないこともあり、母親泣かせであることは確かだ。
 そのような母親心理に応えるためか、予防接種のスケジュールの組み方を載せているウェブサイトや、予防接種スケジュール管理アプリまであるようだ。ウェブサイトの多くは、小児科クリニックや製薬会社が作っており、それ故に、予防接種の対象となる疾患の重篤性が強調されている反面、ワクチンによる副反応についてはほとんど記載がないか、記載があっても「心配ない」という程度のものである。インターネットで簡単に検索できるレベルではこの程度の情報しか出てこないのであるから、乳幼児の育児に追われている母親が、ワクチンのリスクを知ることは、よほどの問題意識を持っていない限り非常に困難である。

 子どもに病気になって欲しいと思っている親はいないはずであるから、重篤な病態を知らされ、かつ予防接種のリスクを知らされなければ、迷わず接種することになろう。自分の子どもが病気になっても副反応が起きても、いずれにしても自責の念に駆られることは避けられないと思うが、せめて子どものためにした選択が根拠のあるものと言えるために、積極的に情報にアクセスしていかなければならないし、それを子育て世代に広める手段を考えなければならないと思う。結局6年前と似たような結論になってしまったことが悲しいところであるが、再考するきっかけになったと前向きに捉えたい

閉じる