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 薬害オンブズパースン会議はHIV訴訟(薬害エイズ訴訟)の和解成立の翌年である1997年に、東京HIV訴訟弁護団他の呼びかけで発足しました。鈴木代表も私も弁護団メンバーです。
 2016年の3月で和解から20周年ですが、それを目前に薬害エイズの被告企業のひとつ化学及血清療法研究所(化血研)の不正に関する報道がありました。承認申請時から、申請書に記載のない添加物を加えて血液製剤の承認を得、それを40年以上組織的に隠蔽してきたというのです。薬害エイズ事件の確認書では、被告企業らは、薬害再発防止を約束していますが、その当時から、不正をしていたわけです。原告団とともに怒りの記者会見をしました。私たちの会見が終わって移動した後、化血研が会見をしました。多数のカメラのフラッシュがたかれる中、理事長が深々と頭を下げる様子を、原告の方達と間近で見ながら、なんとも言えない虚しさを感ぜずにはいられませんでした。薬害訴訟の目的は賠償金獲得だけではありません。薬害再発防止は被害者の切なる願いなのです。
 ところで、この事件で化血研は110日の業務停止処分を受けています。しかし、処分期間中も、代替性がないと判断された医薬品28品目については、販売の継続が認められました。
 本当に代替性がないものについての供給は患者のためにやむを得ないことと思いますが、この中にはインフルエンザワクチンも入っていますので、除外品目の選定のあり方には、疑問を感じます。
 また、企業に対する制裁の実効性という点でも問題があります。業務停止によって受ける経済的損失と、長期にわたる不正で得た利益とを天秤にかけると、前者の方が軽いことは明らかです。患者のためということで、例外的に販売を認めざるを得ないことがあるのであれば、それも踏まえた制裁のシステムが必要です。例外的に供給する医薬品の薬価が通常と同様であってよいのかという点も含め検討されるべきです。

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