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 HPVワクチン接種後の少女たちに起きる慢性の痛みや運動障害、記憶障害といった特異な症状が問題になっていますが、ワクチン推進派の医師らは、そうした症状はたまたま接種後に起きたいわゆる“紛れ込み”であって「もともとそういう症状を訴える若い患者は結構いる」と主張しています。  
 こうした状況を受けて、厚生労働省は新たに「青少年における『疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状』の受療状況に関する全国疫学調査」を実施することにしました。大阪大学の祖父江友孝教授を班長に、神経内科や産婦人科、疫学・公衆衛生、痛みなどが専門の医師らで研究班を作り、2015年下半期に全国の医療機関の神経内科など11診療科を受診した12〜18歳の男女で「全身の痛みや運動障害、学習能力の低下などが三か月以上続き、通学や就労に影響が出ている人」がどれだけいるか、回答してもらうというものです。全国の200床以上の病院すべてと、199床以下の病院の半分を対象に、1次調査で患者がいると回答した医療機関に詳しい2次調査をするしくみです。
 現在はHPVワクチンの積極的勧奨が中止されているため接種率は極めて低いと考えられますので、この調査で、ワクチン推進派の医師がいうように、痛みや運動障害、記憶障害といった独特の症状が同じような年頃の若者に多数発生しているのかどうかを確かめることができる可能性があります。
 しかしこうしたアンケートの手法で、低頻度のしかも多様な症状を呈する患者を正しく拾い上げることができるのか、よくわかりません。また当初発表された研究班のメンバーに、HPVワクチン副作用被害者を多数診察した医師が入っていないことにも疑問がありました。そこで当会議では、2015年12月1日、「『子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究』に関する意見書」を厚生労働大臣に提出し、研究の方向性や委員の選び方の問題点を指摘しました。
 一方、2015年に名古屋市が行った7万人規模のHPVワクチン被害実態調査では、こうした大規模な調査をしたことは評価できるものの、不適切な解析しか行われていないために、本来の調査目的である被害実態の解明はまったくできていません。そこで当会議では、2015年12月16日、「『名古屋市子宮頸がん予防接種調査 解析結果(速報)』に関する意見書」を名古屋市長に提出し、得られた貴重な調査データをより適切に解析して、ワクチン接種後の健康被害の実態をより明らかにするとともに、生データを開示することで他の研究者が解析できるようにすべきであると求めました。

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