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●原因薬
 リン酸オセルタミビル(商品名タミフル)。米国ギリヤード・サイエンス社とスイスのロシュ社が開発した抗インフルエンザウイルス剤で、日本では2000年12月に日本ロシュ(後に中外製薬と合併)が「タミフルカプセル75」の承認を受け、2001年2月から販売を開始した。タミフルは、日本で大量に使用され、厚生労働省の資料では、「発売から現在までの推定使用患者数」は、全世界で4500万人に対し、日本は3500万人、つまり、世界の78%を日本1国で使用してきた。

●被害
 タミフルは脳内に移行し、中枢神経を抑制する作用を有する(脳内に蓄積されたオセルタミビル未変化体がNMDA型グルタミン酸受容体と結合して中枢神経に作用すると考えられている)。この中枢神経抑制作用により、低体温、呼吸抑制、突然死、異常行動などの精神神経症状が生じる。

●被害発生の経過
 2004年6月、厚労省医薬食品局は、「医薬品・医療用具等安全性情報」に、タミフルの「重大な副作用」として異常行動等の「精神・神経症状」を追加するように指導。そのため、同年5月からタミフルの添付文書の「重大な副作用」欄に「精神・神経症状」が追記された。
 2007年2月、タミフルを服用した中学生がマンションから転落死する事例が2件発生し、同月28日、厚労省医薬食品局が注意喚起。さらに同年3月20日、12歳のインフルエンザ患者がタミフル服用後に2階から転落して骨折した事例が2件報告されたことから、「10代の患者には、原則としてタミフルの使用を差し控えるように」との緊急安全性情報が出された。

●疫学調査
 厚労省研究班「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」平成17年度報告書(横田班報告)は、インフルエンザ時の異常言動発現にタミフル使用群と未使用群で差がないとしたが、服用直後のデータを適正に解析することにより、おびえ・恐怖、幻視・幻覚、突然大声、怒り出す、異常言動など、いずれも有意に増加させることが判明。
 2007年12月25日に公表された廣田班(平成18年度調査)の第一次予備解析報告のデータは、タミフルが異常行動を有意に高めることを強く示唆していたものの、解析結果は異常行動が少なかったとされた。しかしながら、後日、解析手法に誤りがあったことが判明。その後、藤田らが廣田班報告のデータを用いて、再度解析を行い、せん妄は、発熱後8時間から16時間頃まで5〜7倍有意に生じやすくなっていたこと等が明らかになった。

●訴訟
 異常行動・突然死により死亡した患者の遺族は、PMDA(医薬品医療機器総合安全機構)に対し、遺族一時金等の給付を請求したが、PMDAはいずれも不支給決定。そこで、名古屋地裁等において、PMDAに対し遺族一時金不支給決定処分の取消を求める行政訴訟を提起。東京地裁、名古屋地裁において請求棄却の判決がなされ、現在控訴審係属中。

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