閉じる

 ディオバン事件について、不正な臨床試験の結果を広告に用いたノバルティスファーマ社とその社員が起訴されたことは、ご承知のことと思います。

 当会議は、2013年11月に同社を薬事法違反等で刑事告発をし、その後、厚生労働省も同社を告発しています。今回の起訴は、これらの告発をきっかけとする捜査の結果に基づくものです。

 しかし、起訴の対象は、海外のWEBサイトに掲載された臨床試験の解析記事で、当会議が告発した記事ではありません。当会議は、『日経メディカル』誌に掲載された医師の対談記事を告発対象としました。このような形式の広告は数多く行われ、臨床現場に与える影響力も大きいのですが、厚労省や企業は、薬害イレッサ事件の際、これは学術情報の提供であって、薬事法の規制対象となる広告ではないと強弁したことがあったのです(現在はその見解を改めたようです)。そこで、その問題性を改めて問いたいと思いました。

 また、私たちは会社の組織ぐるみの犯罪として告発しました。しかし今回、会社が起訴されたのは、社員が薬事法違反行為をした場合には、会社も刑事責任を問われると定めた両罰規定に基づくもので、会社の組織的な関与についての刑事責任を正面から問う構成ではありません。

 それでも、事件の立件に至ったことの意義は大きいと考えます。

 私たちが望んでいるのは「製薬企業が、その豊富な資金を使って、研究者に臨床試験を企画・実行させ、その結果をねじ曲げてまで広告宣伝に利用する」というマーケティング戦略とその背景にある産学の不健全な関係にメスを入れることです。

 今後は、公判を通じて、構造的問題が明らかになることに期待し、注目していきたいと思います。

閉じる