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 9回裏ツーアウト満塁、次の一打で試合が決まるという場面で、間一髪アウト・セーフの判定をする審判が、どちらか一方のチームから現金を受け取っていることがわかったら、みなさんはその判定を信用できるでしょうか? それどころか、試合をやっている最中に一方の監督さんから現金をもらっているところを目撃したら…?おそらく観客たちは激怒しますよね。そんな審判やめさせろ、と。当然のことです。  
 ところがHPVワクチン接種後の少女たちに多発した疼痛、運動障害、認知障害などについてワクチンとの関連性を検討してきた厚生労働省の審議会の委員たちの利益相反ぶりは、そんな野球ファン激怒が必然といった状況なのです。

 審議会は2014年1月、接種後の少女たちの症状は「針刺しによる心身の反応」であり「ワクチンの薬液との関連はない」という結論をほぼまとめ、このままいくと、現在は一時中止されている「ワクチン接種の積極的勧奨」が近く再開されてもおかしくない雰囲気の中で議論が進められています。
 そこで私たちは2014年5月の審議会の際に公表された最新の資料をもとに、委員の利益相反の再点検をしました。すると、なんと副反応検討部会の委員たちの利益相反は審議中に悪化していたのです。ワクチンメーカーのグラクソ・スミスクライン、MSDのいずれかから講演料、原稿執筆料などの金を受け取っていた人は10人中8人(80%)と変わりませんでしたが、受取金額が「50万円以下」から「50万円超500万円以下」に増えていた委員が1人いました。申告ミスでない限り、昨年12月以降、今年5月までに受領した可能性があることになります。
 それだけではありません。さらに別の2人の委員も今回の申告で、受け取った時期を「平成25(2013)年度中」としているのです。ワクチン副作用についての審議が始まったのが2013年5月ですから、この2人は明らかに「審議が始まる直前」か「審議中」にメーカーから金を受け取っていたことになります。

 こんなことになるのも今の国の利益相反管理のルールが甘すぎるからです。過去3年度で最も多かった年度の金額を50万以下、500万以下、それ以上の刻みで申告するだけでよく、審議中に当該メーカーから金をもらうことを禁じていません。仮にメーカーの社員が身内にいても「配偶者または生計を一にする一親等」でなければオーケーです。
 これでは国民に信頼される審議はとうてい期待できないでしょう。そこで私たちは2014年5月29日付で厚生労働大臣に対し、早急に利益相反管理のルールを改正して「受取金額と時期の明確化」「審議中の金銭受取禁止」を規定するよう求める要望書を提出しました。

 冒頭のプロ野球の例を引くまでもなく、公明正大な審判(委員)の下でなければ公明正大な試合(薬事行政)は望めないのです。一刻も早く国民の信頼が得られるようなルールの改正が必要です。

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