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 私が薬害オンブズパースンの活動に関わるようになったきっかけは、北海道HIV訴訟を支援する会の会報編集のお手伝いからでした。その活動は非常にやりがいのあるもので、今までよく知らなかった薬害被害の実態や、ボランティアの方々の存在、病気と患者、治療の現実、それらをとりまく社会のしくみ等々、たくさんのことを勉強させていただきました。訴訟を支援するという立場なのに、いつでも私の方が支えられていました。

 少しずつ色々なことが見えてきて、薬剤師をしていることが恐ろしくもなってきました。薬害の事件において私達は加害者です。薬をきちんと使うように私が指導して、その患者さんが被害にあえば、それでもしもその患者さんが命を落としたりしたら、それは私が殺してしまったと同じことです。それなのに原告の方々は大きな心で私達を受け入れてくださり、その大きさに支えられて私は働いてきました。支援する会に支援されに行っている、変な会員でした。

 その後、訴訟は一応和解して支援する会はなくなり、薬害オンブズパースン会議を支援する会へ活動がうつることになりますが、残念ながら薬害はなくならず、北海道薬害ヤコブ原告を支える会や薬害肝炎訴訟の支援にも関わってきました。「支援」するという活動を通して、逆にこちらが支えられているという思いはずっと変わりません。

 私たち薬剤師の仕事には、渡した薬でその患者さんが亡くなってしまうこともあるという恐ろしい現実がついてまわるもので、もらった睡眠薬をためておいて、まとめてのんで亡くなられるような事件もあります。多くのんだりしないでね、とお願いしますが無力感もあります。逆に、お金がないから必要な薬が使えないという事例もあります。患者さんの安全な薬物療法を「支援」し続けるために、社会的な問題にもどんどん切り込み世間に訴えていく薬剤師の勇気ある行動が、これからもっと求められていくのだと思っています。

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