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医薬品行政を監視・評価する第三者組織(以下「第三者組織」といいます)については、2011年4月の薬害肝炎検証・再発防止委員会最終提言(以下、「最終提言」といいます)で設置が提言されたのに続いて、2012年1月の厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会「薬事法等制度改正についてのとりまとめ」でも設置すべきと明記されました。それまでの経緯については、本誌39号掲載の田辺保雄弁護士の報告(※)のとおりです。

 ところが、「とりまとめ」に第三者組織設置が明記され、また歴代厚労大臣が設置を約束してきたにもかかわらず、小宮山厚労大臣(当時)は、2012年4月、閣議後記者会見で「政府として法案を提出するのは今国会(平成24年第180回通常国会)は難しい」「超党派の議員立法でやっていただくことがいい」と発言し、政府が第三者組織設置法案を提出することを事実上放棄しました。

 そして、与党民主党は、議員立法案の検討を始め、5月下旬、その内容が明らかになりました。大変ひどい内容でした。議員立法案には、薬害発生・拡大の防止という目的規定もなく、個別医薬品の安全性を調査する権限も、審議事項を自ら発議する権限も、製薬企業等の外部機関からの情報収集に関する権限も定められておらず、最終提言が示した第三者組織像からは、かけ離れていました。

 薬害肝炎原告団・弁護団は、5月28日、厚労大臣等に対し、議員立法案は第三者組織を骨抜きにしていると批判し、歴代厚労大臣が約束したとおり、今国会において、政府提出法案により、最終提言に沿った第三者組織を設置するよう求める意見書を提出しました。

 しかし、小宮山厚労大臣は、8月3日、原告団・弁護団との協議の席でも、国会情勢や、審議会を原則として新設しないとする平成11年閣議決定を理由に挙げ、政府提出法案は難しい、議員立法でやってもらう、と回答しました。そして、同月29日には、民主党から衆議院に第三者組織設置法案が正式提出されました。この法案は、従前の議員立法案の骨抜き部分を改善していない上に、権能・権限をさらに縮小する方向に修正が加えられていました。もはや、民主党は、第三者組織の名を借りた、行政の隠れ蓑になりかねない形だけの組織を作ろうとしているとしか思えません。原告団・弁護団は、9月3日、厚労大臣の約束反故と民主党の法案提出に断固抗議し、法案成立に反対する旨の意見書を公表しています。同法案は衆議院を通過することなく会期末を迎えましたが、野党の一致した反対にもかかわらず、継続審査とされています。

 薬害根絶のためには、形だけの組織を創っても意味はありません。最終提言の示すとおり、薬害再発防止の機能を果たすことができる、独立性・専門性・機動性を備えた組織を創らなければなりません。厚労省は、今後もことあるごとに、第三者組織の創設に抵抗してくることでしょう。この抵抗を乗り越え、中身のあるしっかりとした第三者組織の創設を目指して、薬害被害者と薬害防止を目指す市民たちは、一致団結して、粘り強く活動していく必要があります。

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