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「病気づくり」と「疾病啓発広告」 
 2010年10月7日・8日の2日間、オランダのアムステルダムにおいて、Selling Sickness 国際会議があり、当会議の代表3名が出席し、ポスター発表を行いました。
 この会議は、“Healthy Skepticism(健全な懐疑主義)オランダ”という組織が主催、医薬品適正使用研究所、及び“Healthy Skepticismインターナショナル”が協賛したもので、スポンサーは、オランダ保健省及びオランダ保健医療観察局、WHOヨーロッパ地域局です。
 医薬品の販売促進の目的で、本来は疾病というべきでないものを新たな疾病と定義して、医薬品の処方対象を広げる「Selling Sickness(病気づくり)」と、「疾病啓発」に名を借りた医薬品の宣伝広告が、医薬品の適正な使用を損なっている現状の問題点を分析し、医薬品の適正使用を実現する方策を討議するために開催されました。

世界各国から200名が参加
 当日は、Healthy Skepticism、オランダ保健省やWHOヨーロッパ地域局の関係者はもとより、世界各国から医療専門家や製薬企業関係者、市民団体の関係者などが、200名以上集まり、参加者が一同に介する会議場で、19名の演者が次々と講演を行いました。
 講演内容はあまりに豊富で簡単にはご紹介できないので、Webサイトで紹介されている講演の要約と講演で使用されたスライドを是非ご覧いただきたいと思いますが、7つの質問の1つでも「はい」と答えると「女性機能障害」に分類され薬物治療の対象となってしまうという実例の紹介や、具体的な医薬品名に触れない疾病啓発広告と医薬品売上の相関関係を示した研究、WHOによる広告の定義やガイドラインの紹介、オランダやドイツで行われている患者へのエビデンスに基づく情報提供の取組の紹介など、いずれも興味深い内容ばかりでした。
 3人の講演が終了する毎に会場との意見交換に入るのですが、会場発言用のスタンドマイクの前には行列ができて、常に時間オーバーになる状況でした。最後は、国際的なネットワークを創設することの重要性を確認して会議が終了ました。

イレッサに関する当会議のポスター発表が受賞
 ところで、当会議は、イレッサの問題をテーマにポスター発表をしました。イレッサは、ご承知のように、2002年7月に日本で世界に先駆けて承認された肺癌治療薬です。承認前から医学情報の提供を装った宣伝によって副作用の少ない「夢の新薬」との期待が流布されましたが、副作用である間質性肺炎により、本年3月までに810名もの死亡者を出しました。このうち180人が承認から半年、557人が承認から2年半に集中しています。これは過剰な宣伝広告が行われた一方で、警告が全く不十分であったことに大きな原因があり、その背景には専門家と製薬企業との利益相反の問題もありました。これほどまでの被害を出したのは日本だけです。そこで、私達は、これらの現状と問題点を紹介し、問題解決のための制度的な提言を行いました。
 ポスター発表は全部で22ありましたが、私たちの発表は、幸い「ポリシー賞」を受賞しました。イレッサ薬害は重大な問題であり、これを取り上げたというのが受賞の理由です。
 この受賞を励みとして、私たちも国際的なネットワークの強化に加わっていきたいと思います。また、薬害イレッサ問題を教訓とした制度改革の実現を含め、薬害イレッサ問題の全面的な解決も応援していきたいと考えています。

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