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 薬害オンブズパースン会議は1997年6月に設立され、12年目を迎えている。
 本年6月8日に10周年記念企画として、医薬品評価を歪めている最大の問題点である「利益相反問題」をテーマに、国際シンポジウムを開催した。
   *ここでいう利益相反問題とは、医薬品評価という公益を図るべき医薬専門家が企業から経済的利益を得ている状態を指す。
 この問題意識は、米欧の民間医薬品監視団体とも共有している。
 今回のシンポでは、米パブリックシチズン・ヘルスリサーチグループ副ディレクターのピーター・ルーリ氏及び仏・プレスクリール・インターナショナル編集長のクリストフ・コップ氏を招き、当会議事務局長・水口真寿美氏の3名がシンポジストとして報告し、討論を行った。
   *詳しくは、当会議が発刊した資料集を取り寄せのうえ参照頂きたい。
 ルーリ氏は、米国の利益相反問題が医学研究、臨床診療、医学教育、公的諮問委員会と広汎に広がっていることを指摘し、それぞれの利益相反現象を分析した。そのうえで問題解決のためには、利益相反の禁止(法規制)、監視(行政規制)、開示(公表)が一般的であるとした。
 コップ氏は欧州における開示を中心として利益相反の監督が医薬品評価の歪曲を防止するには不充分であることを実例をもって報告したうえで、90年に設立されたICH(日米欧医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議)が権力の濫用となっているとし、利益相反問題は開示では不充分で、排除こそが最善と述べた。
 水口氏は、日本における利益相反問題を研究、診療ガイドライン作成、規制(承認、審査、市販後対策)の三つの場面において報告し、薬害防止の観点から(1)産官学連携の根本的価値を問い(2)米欧の教訓に学び(3)開示が万能でないことを知って規制のあり方を見直し、(4)問題解決には多角的制度設計が必要で国際的連帯が不可欠、と述べた。
 このシンポによって医薬品評価を歪めている利益相反問題が世界的に共通であることが確認され、今後の国際連帯がスタートしたといえる。
   *なお当会議では04年8月からホームページ上に「注目情報」を掲載し、その中で08年4月までの間、50件の利益相反問題に関する海外情報を紹介し、二冊のパンフレット(「利益相反」)にまとめている。ご希望の方は当会議までお問い合わせを。また、本シンポの際に当会議10年間の「活動報告集」も配布した。

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